第三者委員会の中立性は「同窓会つながり」で否定されるのか?―藤本委員長と五百旗頭真氏の関係をめぐって

2025年10月8日

第三者委員会の「中立性」をどう判断するか

第三者委員会は、行政や企業の不祥事対応でしばしば設置される調査機関です。
その目的は「事実関係を客観的に明らかにし、信頼回復につなげること」にあります。

中立性や独立性を保つためには、

「利害関係を有しない者」「公正な判断を行える者」
であることが求められます。

日本弁護士連合会の「第三者委員会ガイドライン」や内閣府の「公益通報対応指針」でも、
この原則が明記されています。

ただし、「利害関係」とは経済的・職務的・人的な密接な関係を指します。
たとえば、

  • 調査対象企業や人物の顧問弁護士
  • 家族・親族関係
  • 金銭の授受・契約関係
    などが該当します。

「同窓会で役職が重なっていた」は中立性を欠くのか?

斎藤知事支持者の一部は、

「第三者委員会の藤本委員長と、五百旗頭真氏が六甲学院の同窓会で会長・副会長や顧問を務めていた」
ことを理由に、中立性を疑問視しています。

しかし、このような同窓会での形式的な役職重複が、直ちに「密接な人的関係」や「利害関係」に当たるとは言えません。

同窓会の役職が重なっていたというのは、形式的には「人的関係」にあたりますが、中立性を否定するほどの「密接な関係」とは通常評価されません。

特に、

  • 役職といっても多くは名誉職や象徴的な立場
  • 同窓会は会員数が多く、運営は事務局主体
  • 公職や社会的立場のある人物が引き受けることが多い

という実態があります。
したがって、「同窓会で15年間関わっていた」としても、実際に頻繁な接触や共同業務があったかが問題です。
その実質的な関係性が認められない限り、中立性を否定する根拠にはなりません。

同窓会の役職は名誉職的な性格が強い

同窓会の会長・顧問といった役職は、多くの場合、

  • 名誉的な立場として依頼される
  • 運営は事務局主体で行われる
  • 会員数が多く、個人的な交流が限定的

といった性格を持っています。

五百旗頭氏のような著名人、藤本氏のような元裁判官がそのような役職に就くのは珍しいことではなく、「15年間重なっていた」としても、それが日常的な交流を意味するわけではありません。

「県が了承している」ことの重み

さらに、第三者委員会の人選は、県側も了承して委嘱されています。
つまり、県はその関係を把握した上で「中立的な人選」と判断しているのです。

仮に中立性が問題となる場合でも、焦点となるのは「調査過程に偏りがあったか」「判断内容が不合理だったか」という実質面です。

① 第三者委員会の設置・人選は「県の正式手続き」

第三者委員会は、知事(または県の担当部局)が正式に依頼し、
委員を選任・委嘱する形で発足します。
つまり、行政手続の一部として行われる公的行為です。

そのため、委員選任の段階で中立性や適格性を確認し、問題があればその時点で異議を出すべきです。
この確認を経て正式に発足した以上、後から「やっぱり不適格だった」というのは、自らの判断ミス・監督責任を認める発言になります。

② 「中立性が欠けていた」と主張する=手続きの正当性を否定する

行政が「中立性に問題があった」と主張することは、つまり「自らが不適切な委員を選任し、その報告を受けた」ということを意味します。

これは法的には、

  • 委員会設置手続の瑕疵
  • 意思決定過程の適正性欠如
  • 報告受領後の管理監督義務違反

と見なされるリスクがあります。

そのため、行政としては極めて言いづらい主張であり、実務的にも「後出しで中立性を問題視する」ケースはほとんどありません。

③ 一度受け入れた報告書を後から否定すると「恣意的」と見られる

さらに、第三者委員会報告書を一度受け取り、一定の公的発表までしておきながら、後に「委員に問題があった」と否定するのは、不都合な結論を覆すための恣意的判断と受け止められかねません。

特に今回のように、県が委員人選を了承している場合、「都合が悪くなったから中立性を問題視した」と県民やメディアから厳しく批判されるリスクがあります。

④「第三者のふり」という主張は、県の人選手続に瑕疵があったと認める発言

「藤本久俊のような関係者が第三者のふりして委員長をやるんだから。」と斎藤信者が主張することは、行政手続上は「不適切な委員選任があった」と認めることを意味します。

それはつまり、

  • 知事や県の判断が不十分だった
  • 委員人選のチェック体制が機能していなかった

という批判に直結します。

このため、そんな発言をすれば、結果的に斎藤知事や県の信用を傷つける自己矛盾的な主張になるのです。

日経新聞の「裁判で覆る」記事との関係

2025年5月30日の日経新聞の記事では、

「第三者委員会の認定事実が裁判で覆るケースが多い」
と指摘されています。

ただしこれは、第三者委員会の制度的な限界(証拠収集や調査権限の制約)について述べたもので、特定の委員の人脈や背景によるバイアスを問題視したものではありません。

つまり、今回の六甲学院同窓関係とは全く別の文脈です。

斎藤知事「第三者委は公平で中立」 「委員が利害関係者」SNSの言説を否定(2025年4月24日)

斎藤元彦知事は23日の会見で「第三者委の公平性、中立性は保たれていた」との認識を示し、言説を否定した。

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202504/0018906485.shtml(出典:神戸新聞)

結論:形式的な関係で中立性は否定できない

同窓会の役職が重なっていたというだけで、第三者委員会の中立性を否定することはできません。

  • 実質的な利害関係がない限り問題とはならない
  • 県も人選を了承している
  • 評価すべきは「手続きの公正さ」「報告内容の合理性」

中立性を疑うのであれば、人脈よりも調査手続や結論の妥当性に基づいて検証するのが本筋です。