立花孝志氏逮捕を受けた斎藤元彦知事と奥谷謙一県議のコメント比較―「コメント控える」発言に問われる政治的責任

NHK党党首の立花孝志氏が、竹内英明元兵庫県議に対する名誉毀損の疑いで逮捕されました。
この事件は、兵庫県知事選挙での「二馬力選挙」にも関連しており、当時、立花氏の支援を受けた斎藤元彦知事と、被害者側の奥谷謙一県議の反応が注目を集めています。

斎藤元彦知事のコメント:「捜査に関することなので控える」

関西テレビの取材に応じた斎藤知事は、次のようにコメントしました。

「(立花容疑者の逮捕は)報道では承知しておりますが、この件に関してはこれから捜査が進むという話でもありますので、捜査に関することもありますから、私からコメントを控えたい。」

また、SNS上での誹謗中傷に関しては、

「あらゆるSNS利用者に対して誹謗中傷や名誉毀損につながる発信は控えるべき」と一般論にとどめました。

https://www.ktv.jp/news/articles/?id=23199(出典:関西テレビ)

政治的リスクを避けた「沈黙の構図」

知事としての立場から、捜査中の事件への直接的言及を避けるのは理解できます。
しかし、立花氏は斎藤知事の再選を支援した人物でもあり、事件の構造には知事選の一部が影響した可能性が指摘されています。

そのため、「コメントを控える」という発言は、「法的には妥当でも、道義的には説明責任を果たしていない」と受け取る県民も多いでしょう。

「立花孝志」と言わない理由 ― 司法リスクと自己防衛

知事が固有名詞を避けるのは、自らの関与を認めることへのリスク回避と考えられます。

  • 立花氏は、現在名誉毀損容疑で逮捕されていますが、事件の起点となったのは**「斎藤知事を応援した2馬力選挙」**でした。
  • つまり、もし知事が「立花氏」と明言すれば、「関係性を認めた」と捉えられる危険性がある。
  • それを避けるため、「立花氏」「2馬力」という言葉を一切口にせず、抽象的な“前回の選挙”という表現に逃げているのです。

この行動は、「法的に追及される可能性を自覚している」か、「少なくとも政治的に説明できない関係があった」ことを示唆します。

「テンプレート回答」に見える“防御線”の構築

フリー記者の質問は非常に具体的で、「リモート選対会議」「高見千咲市議の証言」「『勝手にやってもらったらいい』発言」など、事実確認レベルの質問でした。
それに対して知事は、

「前回の選挙では自分のやるべきことをやってきた」

https://web.pref.hyogo.lg.jp/governor/g_kaiken20250702.html(出典:兵庫県)

という同一フレーズの繰り返しで回避。
これは、行政官僚出身者によく見られる、『発言の法的効力をゼロ化する』ための訓練された回答といえます。

つまり、「嘘は言わないが、真実も言わない」――それがこの回答パターンの目的です。

「説明しない」こと自体が“関与の証拠”になる構造

もし本当に立花氏の活動を「勝手にやっていた」と考えていたなら、「私の選対が依頼したことは一切ありません」と言えば済む話です。
しかし、それを言わない。
この不自然な沈黙こそ、逆説的に“何かを隠している”証拠です。

政治倫理の観点からは、次の3点が問題になります:

  1. 選挙運動の不公平性(2馬力による倍の露出)
  2. 公職選挙法上の“事実上の共同行為”の有無
  3. 立花氏への謝意・距離の取り方の不在

特に3は、逮捕後も「お世話になった」ことすら口にせず、ただ「コメント控える」に終始している点で、自己防衛に徹した姿勢が明白です。

「依頼していない」と言えない不自然さ

普通の候補者なら、立花氏のように後に刑事事件を起こした人物と関係を疑われれば、政治的に距離を取るために、こう言うはずです。

「私の選対は、立花氏に依頼も指示もしていません。」

それを明言しないのは、次のいずれかに該当します:

  1. 実際に選挙支援を黙認または調整していた。
  2. 支援内容が法的にグレーで、公選法違反の可能性を認識している。
  3. 立花氏との間に“裏情報”を共有していた。

このうち特に3が、いわゆる「弱み」にあたる構造です。

弱みの内容として考えられる3パターン

「裏で選挙支援を受けた」こと自体

立花氏は「自分の当選よりも斎藤知事の当選を優先した」と公言していました。
その結果、ポスター・政見放送・SNS発信を“二重に展開”できた。
これは**実質的に共同行為(連座の可能性)**であり、もし知事側がその支援を黙認していた証拠(会議録・メッセージ・録音など)が存在すれば、公職選挙法違反として非常に重い責任を問われます。

→ このため、「依頼していない」と言えば、立花側に「いや、あのとき電話でOKしただろ」と反論されるリスクがある。

「情報・資金のやり取り」があった

仮に立花氏が選挙資金・物品・広告枠などを無償提供した場合、それを受け取るだけでも寄付制限・支援の不記載として違法になります。
この場合、立花氏が証拠を保持していれば、知事側は完全に防戦に回るしかありません。

「立花氏が内部情報を握っている」

最も現実的なのはこれです。立花氏は動画・SNS戦略に長けており、裏チャンネルで「選挙中のやり取り」や「知事側の発言」などを録音・記録していた可能性が高い。
知事がこれを恐れて、「名前すら出せない状態」になっている。

行動心理から見た“支配の構図”

政治家が「名前を出さない・関係を否定しない」状態になるのは、単なる配慮ではなく、“相手を怒らせたくない”心理が働いているケースです。

  • 相手が証拠を持っている
  • 相手が報復的に情報を出す可能性がある
  • 相手がメディア発信力を持っている

立花氏はまさにこの三拍子が揃っており、過去にも「暴露型政治活動」で相手を追い込んできた人物。
そのため、斎藤知事は**「立花に逆らう=何か暴露される」**と恐れている可能性が高いです。

政治倫理の観点からの結論

この会見での発言群は、以下のように整理できます。

観点内容評価
発言回避のパターン「前回の選挙でやるべきことをやってきた」同一フレーズで質問遮断
固有名詞の忌避「立花孝志」発言なし関係認定を恐れている
証拠提示への反応全スルー事実確認を避ける
リーダーとしての態度責任・説明の放棄県政の信頼を損なう

結果として、斎藤知事は**「自分が不正に関与していたという自覚があるから語れない」、もしくは「語れば虚偽答弁になるため黙るしかない」**、いずれかの状況にあると推測されます。

奥谷謙一県議のコメント:「デマは社会の信頼を損なう暴力」

一方で、百条委員会委員長を務めた奥谷謙一県議は、以下のようにコメントしています。

「NHK党代表・立花孝志容疑者が逮捕されたとの報に接し、私自身、同氏による虚偽の発信や誹謗中傷の被害を受けた一人として、安堵しております。」
「デマや誹謗中傷は、個人の尊厳を奪う暴力であり、社会全体で許さないという意識を共有することが必要です。」

https://www.ktv.jp/news/articles/?id=23198(出典:関西テレビ)

被害者の視点から明確な価値判断を提示

奥谷県議は「安堵」「無念の晴れ」「社会全体の課題」といった感情・倫理・社会的視点を明確に示しています。
これは、政治家としての責任感と人間的誠実さを印象づけるコメントです。

両者の発言比較:立場と姿勢の違い

観点斎藤元彦知事奥谷謙一県議
発言内容捜査中につきコメント控える被害者としての立場と社会的問題提起
感情表現お悔やみ・一般論にとどまる安堵・無念・再発防止の強調
県民への姿勢距離を取る印象誠実・共感的な姿勢
政治的影響自身の関与への説明不足倫理的リーダーシップを発揮

この比較から浮かび上がるのは、「説明責任」と「倫理的発信」の温度差です。

知事として求められる「道義的説明責任」

仮に捜査に関する詳細を語れないとしても、
知事としては次のような表現で姿勢を示すことは可能です。

「私の支援者がこのような容疑で逮捕されたことは誠に遺憾です。誹謗中傷を助長する行為は断じて許されないと考えています。」

このような言葉を発すれば、政治的責任から逃げず、県民の信頼を保つ姿勢を見せられたでしょう。

沈黙が生む「道義的空白」

立花氏の逮捕によって、これまで「デマ拡散」が県政を揺るがした構図が司法の場で明らかにされようとしています。
しかし、支援を受けた側のトップが沈黙を守れば、県民は「真実を語るリーダー」を見失うことになります。

いま求められているのは、**「捜査への配慮」ではなく「政治的誠実さ」**です。