兵庫県議会・総務常任委員会で露呈した「法律より知事の判断が優先される」矛盾

2025年11月19日

公益通報者保護法の解釈を巡る“県と知事の一体化”の危うさ

総務常任委員会で浮かび上がった深刻な問題

令和7年11月17日の兵庫県議会・総務常任委員会では、伊藤傑県議の質問をきっかけに、

  • 「国の法律」より「知事の判断」が優先されているのではないか?
  • 公益通報者保護法の扱いに矛盾があるのではないか?
  • 知事の判断を県組織全体に押し付けているのではないか?

という重大な問題がはっきりと露呈しました。

県執行部が繰り返す「法に基づいて判断している」という建前と、実際の運用との間に大きな乖離があることが、議論を通して明らかになったのです。

https://www.youtube.com/live/5jgOvzJA_go?si=nMsq7l4aRR8OGWCD&t=7450

伊藤傑県議の質問:「法律と知事の判断のどちらが重要か?」

伊藤県議の問いかけは非常にシンプルでした。

国の法律と知事の判断では、どちらを優先すべきか?
もし知事が法律と違う判断をしたら、県職員はどちらを守ればいいのか?

これに対し、有田総務部長は次のように回答。

「法令に基づいて判断するのが大原則」

当然の答えですが、ここで伊藤県議は公益通報者保護法の3号通報の解釈へ話を進めます。
すると、有田部長は急に表情を曇らせて、

「所管外なので答えられない」

と逃げてしまいました。

まさに、建前と本音が真っ向から矛盾した瞬間でした。

知事の判断=「県の解釈」?

ここにある“人治主義”の危険性

増山県議・山本県議とのやり取りでさらに問題が明確になります。

有田総務部長は、

「結論に至るまでは相談している」
最終的な判断は知事であり、それが県としての判断

と答弁しました。

つまり構造としては、

  1. 職員が案をつくる
  2. 最終決定は知事
  3. 決まったものは“県の判断”として扱われる

という流れであると認めてしまったのです。

しかし、ここで最大の矛盾が生まれます。

公益通報者保護法の解釈で「国(消費者庁)」と明確にズレている

公益通報者保護法を巡っては、すでに消費者庁が、

  • 兵庫県の対応に懸念を示している
  • 斎藤知事の「発言訂正」を確認していないと国会で明言している

という状況です。

つまり、
国の法解釈と兵庫県の運用には大きな齟齬がある のです。

それにもかかわらず、兵庫県は消費者庁に対し、

「知事の解釈は、消費者庁の法解釈と齟齬(そご)がない」

と説明していると言われています。

これは、

  • 法令に従うと言いながら、
  • 実際には知事の自己正当化的な解釈をそのまま「県の判断」として押し通し、
  • そのうえで“齟齬はない”と国に説明する

という非常に危うい構造です。

なぜ「今回の兵庫県の質疑」は消費者庁にとって大問題なのか

公益通報者保護制度を所管する消費者庁にとって、今回のように

地方自治体(兵庫県)が法の趣旨と異なる運用を行い、
それを組織ぐるみで正当化している疑いがある

という状況は、放置できない重大案件です。

以下、問題点を整理します。

① 法律(公益通報者保護法)より「知事の判断」を優先している構造が露呈

兵庫県は「法令に基づき判断している」と言いながら、実際には

  • 最終的な判断=知事
  • 知事の判断がそのまま“県の解釈”になる

と明言しています。

これは、

地方自治体が法の運用を“首長の恣意性”で左右できる

という危険な状態であり、法治主義に反します。

消費者庁の立場としては当然受け入れられません。

法の解釈は「国 → 地方」へ降りるものであり、地方の首長が勝手に解釈を変えることは許されない
からです。

② 消費者庁はすでに「斎藤知事の発言訂正は確認していない」と国会で明言済み

2025年11月10日の予算委員会で消費者庁の黄川田大臣は、

「斎藤知事から発言の訂正があったとは承知していない」

と答弁しています。

つまり、国(消費者庁)は、

  • 兵庫県の公益通報者保護法の運用に疑義がある
  • 少なくとも、県の説明と国の認識は一致していない

と公式に認めています。

その状況で、

「知事の判断=県の判断」
「県として国の法解釈を否定している」

という状態は、消費者庁の権威や法制度そのものを揺るがす重大問題です。

③ 兵庫県は消費者庁に「知事の解釈は、消費者庁の法解釈と齟齬(そご)がない」と説明している

兵庫県は消費者庁に対し、

「知事の解釈は、消費者庁の法解釈と齟齬はない」

と説明したとされています。

しかし今回の総務常任委員会では、

  • 知事が最終判断
  • それを県の判断として扱う

という構造が露わになりました。

つまり、

兵庫県は“知事個人の判断”を
“県組織の総意としての判断”と装って説明している

可能性があります。

これは消費者庁からすれば、

  • 法の趣旨の歪曲
  • 行政監督を欺く虚偽説明
  • 中央官庁への不実報告の疑い

になり、重大な問題です。

④ 公益通報者保護制度の信頼性を揺るがす

公益通報者保護法は、日本全国の

  • 行政
  • 民間企業
  • 医療・福祉
  • 教育機関

すべてに適用される制度です。

兵庫県のような大規模自治体が

通報者保護よりも
内部の“首長の判断を守る”ことを優先している

と疑われるのは、制度全体の信頼が崩れるレベルの問題です。

消費者庁は全国への示しがつかなくなります。

⑤ 消費者庁としては「黙っていれば制度が崩壊する」状況

今回の兵庫県のやり取りは、消費者庁の立場から見て、

  • 法制度の権威を損なう
  • 国(消費者庁)の定めた法解釈を地方が勝手に変えている
  • 県庁ぐるみで知事の判断を“公式解釈”として押し通している
  • 国会での大臣答弁とも矛盾

という四重苦になります。

これは、消費者庁が絶対に放置できる案件ではありません。

むしろ、

「地方自治体が公益通報者保護法を正しく運用していない事例」
として国が是正指導を行うレベル

と言えます。

このやり取りは「兵庫県の問題」ではなく「国の行政制度の問題」に直結する

今回の総務常任委員会の発言は、

  • 法律より知事の判断が優先
  • 知事の判断を県の判断とする組織構造
  • 公益通報者保護法の国との認識のズレ
  • 消費者庁への虚偽説明の疑い

ーーという点で、

消費者庁としても看過できない重大問題

であることは明白です。

伊藤県議の指摘:「間違いを認めることは恥ずかしいことではない」

議論の最後、伊藤県議は奥谷県議の発言としてこう述べました。

「間違ったことを間違ったと認めるのは恥ずかしいことではない。
それを徹底してほしい」

これは単なる一般論ではありません。

  • 知事の判断を守るために県庁全体が無理な説明を重ねている
  • 法律よりも知事の発言を優先しようとしている
  • 職員が「間違っている」と言い出しにくい雰囲気がある

こうした“組織の歪み”をただすべきだというメッセージです。

特に今回の議論では、

  • 法治主義
  • 組織ガバナンス
  • 公益通報者保護法の運用

という県政の根幹に関わる問題が露わになりました。

兵庫県は「法治」ではなく「人治」に傾きつつあるのではないか

今回の総務常任委員会は、県庁組織が “法律より知事の判断を優先する体質” に近づいている現状を示しています。

  • 法令に基づいて判断するという建前
  • 現場が知事の判断に従わざるを得ない現実
  • その知事の判断をそのまま“県の解釈”として国に説明する矛盾
  • 公益通報者保護法の解釈を巡る国との認識のズレ

これは行政組織として極めて危険です。

県民が求めているのは、

知事のメンツを守る県政ではなく、
法律に基づき、公正で透明な県政運営

です。

今回の議会質疑は、その原点に立ち返る必要性を強く示していると言えるでしょう。