斎藤元彦知事「非を認めない」姿勢の背景とは?─ 給与減額条例の迷走と、広がる議会・県民の不信を読み解く

兵庫県の斎藤元彦知事が提出している「給与減額条例改正案」をめぐり、最大会派の自民党が当初の賛成方針から一転し、「継続審議」 とする決断を下しました。
原因となったのは、知事自身の発言――

「内容は変わっていない」
「技術的な修正をしただけ」

この一言が議会側の反発を招き、歩み寄りかけた議会との関係が再び悪化する事態となっています。

本記事では、条例案がなぜここまで迷走しているのか、そして斎藤知事が 「非を認めない」姿勢を頑なに維持し続ける理由 を、心理・政治・行政組織の観点から読み解きます。

目次

給与減額条例の迷走:歩み寄りが一瞬で崩れた理由

第三者委員会の指摘と“管理責任”

元県民局長の私的情報が漏洩した問題を受け、第三者委員会は「知事の指示の可能性が高い」と指摘しました。

知事はこれを否定しつつも、「管理責任」を理由に自身の給与減額を提案。
しかし議会は、

  • 事実解明が不十分
  • 説明責任が果たされていない

として、6月議会・9月議会ともに採決を見送りました。

12月議会の修正案で議会は歩み寄った

12月議会では県側が修正案を提出し、

  • 情報管理の不備に対する管理責任を明記
  • 条例案の説明も再整理

議会の主要会派は「今回は賛成」の方向に調整していました。

しかし知事の「内容は変わっていない」発言で一気に決裂

議会側が政治的メッセージを込めて修正したにもかかわらず、知事は「内容は変わっていない」と繰り返し発言。

これに対し、自民党幹部は

「我々の思いが知事に届いていない」

と明確に不満を示し、継続審議へと転換しました。

これは、斎藤県政と議会の関係悪化を象徴する出来事といえます。

条例より深刻な問題:知事が“何も認めない”姿勢

今回の条例問題は、斎藤知事のこれまでの対応姿勢の延長線にあります。

パワハラ11件(第三者委員会認定)

→ 認めたが“自身の処分は無し”

公益通報者保護法違反の疑い

→ 「内部通報に限定する考え方もある」という独自解釈
→ しかし消費者庁は国会で“外部通報も保護対象”と明言

告発文書について

→ 「誹謗中傷性の高い文書」と評価し、内容を正面から扱わない

情報漏洩疑惑

→ 第三者委員会が「知事の指示した可能性が高い」を明記
→ しかし知事は「指示はしていない」と完全否定

はばタンPay情報漏洩

→ 委託業者の責任を強調し、自身のチェック体制の責任に言及せずいずれにおいても、“自分の非は一切認めない”という姿勢が一貫しています。

この態度こそが、多くの議員・県職員・県民の不信と反発を生んでいる要因です。

なぜ斎藤知事はここまで頑なに「非を認めない」のか?

「認めた瞬間に政治生命が終わる」恐怖が強すぎる

斎藤知事が背負っている問題は、単なるミスではなく、

  • 公益通報者保護法違反
  • 地方公務員法違反(情報漏洩教唆)の疑い
  • 第三者委員会と百条委員会による指摘
  • 11件ものパワハラ認定

と、複数の法令・倫理問題に跨る重大案件です。

このため本人にとっては、

「一つ認めたら、芋づる式に全ての責任が自分に返ってくる」
「認めた瞬間に政治生命が終わる」

という強烈な恐怖が生まれます。

この心理状態では、真実よりも“自己防衛”を優先してしまう のです。

認知的不協和:自分の“理想像”と現実の矛盾に耐えられない

斎藤知事は、もともと有能な若手官僚であり好青年として評価されてきました。

  • 説明が丁寧だった
  • バランス感覚があった
  • 気配りができた
  • 周囲の信頼も厚かった

https://jisin.jp/domestic/2484080/

https://www.news-postseven.com/archives/20240828_1986603.html/2

しかし現在の状況は真逆です。

  • 説明責任を果たさない
  • 法令解釈が独善的
  • 議会・職員からの信頼喪失
  • 県政混乱の中心にいる

このギャップは本人にとって耐え難いものであり、心理学でいう 認知的不協和 が発生します。

不協和を解消するために人は、

「現実を否定する」

「自分は正しい」と言い聞かせる

という行動に走る傾向があります。

斎藤知事の言動は、まさにこの典型パターンです。

官僚文化の影響:「ミスを認めたら負け」という価値観

長年、総務省でキャリアを積んできた知事にとって、

  • ミスを認める=無能と見なされる
  • 誤りを認めることは敗北
  • 組織文化として正面から謝らない

という価値観が染みついている可能性があります。

これは多くの中央官庁・地方組織に見られる典型的文化です。

斎藤知事には“実質的に相談相手がいない”可能性が高い

奥見司弁護士が「具体的な説明を聞いていない」と発言した意味

公選法違反の弁護を担当し、知事に最も近いはずの弁護士から

「具体的な説明を一切聞いていません」

という言葉が出たというのは、通常の政治・行政の常識からすれば 異常事態 です。

普通の政治家なら、「必ず弁護士と危機管理チームを作り、戦略を固める」のが鉄則です。

それができていないということは、

相談相手がいない

相談しても本音を話せない

“自分で抱え込む”癖が強くなっている

助言が機能しない構造になっている

という可能性が極めて高い。

事実を説明したくない(説明した瞬間に責任が確定する恐怖)

仮に知事が弁護士に詳細を話せば、弁護士は当然のように次のような助言をします。

  • 「それは不利になります」
  • 「法令違反の可能性がある」
  • 「説明しないと悪化します」
  • 「訂正と撤回が必要です」

これは知事にとって“避けたい現実”を直視させられる行為です。

結果として、

相談すると不都合が増える

→ 相談しない方が精神的に楽
→ 問題がさらに悪化

という悪循環が生まれます。

相談すれば「なぜ説明しないのか」と問われる

弁護士に本当の情報を伝えた瞬間、

  • なぜ記者に答えないのか
  • なぜ議会に答えないのか
  • なぜ知事自身の責任に触れないのか

と厳しく問われます。

本人にとっては、これも非常に“痛い”場面です。

信頼して話せる相手が、政治的に消えていった

知事は就任当初、次のような人物の影響を強く受けていたと言われています。

  • 経産省系の知人
  • 政治塾的なネットワーク
  • 大阪府時代のつながり
  • 兵庫の地元支援者

しかし、文書問題以降、

  • 県庁の信頼崩壊
  • 支持層の離反
  • 県議会との断絶
  • 庁内幹部の退任・沈黙

が起きた結果、“身近に意見できる人がほとんどいない” 状況に追い込まれています。

その象徴が、

「奥見弁護士ですら知らない」

という事実です。

知事自身が「助言を受け入れる状態ではない」

ストレスが極端に高まると、人間は次のような傾向に陥ります。

  • 他人の意見を聞けなくなる
  • 説明を求められる場面が怖くなる
  • 自分を守るために“否認”を繰り返す
  • 自信と現実のギャップに耐えられない

これは典型的な 心理的防衛反応 です。

斎藤知事の最近の会見での

  • 質問の理解力の低下
  • 同じ言葉を繰り返す
  • 一般論への逃避
  • 相手の意図を読み取れない
  • 逆ギレ気味の応答

これらの症状は、まさに「助言を受け入れられない状態」 にある政治家に共通する特徴です。

頑なな否認がもたらす悪循環

議会からの信頼はますます失われる

今回の「内容は変わっていない」発言は、議会側の努力に対する“否定”として受け取られ、関係の修復をさらに難しくしています。

県庁組織の士気低下・生産性の低迷

パワハラ認定11件にもかかわらず何も変わらない状況では、

  • 庁内は萎縮
  • 情報共有が止まる
  • 誤りが増える
  • 離職やメンタル不調も加速

といった悪循環が進行します。

県民の不信が加速し、支持層が離反

「謝らない」「説明しない」「責任を他に押し付ける」この一連の構図は、政治に興味の薄い県民でも強く不快感を抱きます。

結果として、無党派層からの支持も急速に失われていくでしょう。

なぜ斎藤知事は非を認めないのか?

過ちを認めれば政治生命が終わるという恐怖

認知的不協和により「自分は正しい」を維持したい心理

官僚文化による“謝ったら負け”の価値観

周囲の側近が否認戦略を固定化している

ストレスによりコミュニケーション能力が低下している