鶏インフル発言に見る『説明不足』が示す兵庫県政の危うさ
兵庫県で鶏インフルエンザ対策が進められる中、斎藤元彦知事の発言について「方向性は理解できるが、説明が不十分ではないか」という声が上がっています。
問題は、鶏インフルエンザそのものではありません。この発言に表れている知事の説明姿勢が、大規模災害などの危機時にも共通するのではないかという点にあります。
本記事では、今回の発言を手がかりに、兵庫県政における「説明責任」と「県民を安心させるコミュニケーション」の問題を整理します。
目次
鶏インフルエンザ発言の何が問題なのか
朝日新聞の記事では、知事の発言は次のように報じられています。
知事の発信は、
鶏卵や鶏肉を食べても鳥インフルエンザは人に感染しない
という趣旨でした。
「速やかな防疫作業を進め、他の養鶏場への蔓延防止にも万全を期すことが大事だ。鶏卵や鶏肉は仮に食べたとしても人に感染することはないのでご安心いただきたい」
「兵庫・姫路の養鶏場で鳥インフル確認 24万羽殺処分へ、今季県内初」
https://news.yahoo.co.jp/articles/81d0b84ba4b8ba9ab36b3b30bf2daa9221cd9569(出典:朝日新聞 2025年12月16日)
この表現を文字通り受け取れば、感染した鶏卵や鶏肉を食べても大丈夫と解釈されかねません。
最低限、
「念のため、生食は控え、十分に加熱したうえで召し上がってください」
といった一言を添えるべきでした。
結論自体は、適切な流通管理や通常の調理を前提とすれば、科学的に誤りではありません。
しかし問題は、その前提条件や理由が一切説明されていないことです。
- なぜ安全なのか
- 感染した鶏肉や卵は流通するのか
- どんな場合に注意が必要なのか
こうした県民が自然に抱く疑問に、答えていません。
その結果、
「感染した鶏卵や鶏肉を食べても大丈夫」
と受け取られかねない、誤解を招く表現になっています。
「正しいこと」と「正しく伝えること」は別
鳥インフルエンザについては、
- 結論:
適切に処理・加熱された鶏卵・鶏肉で人が感染することはない
→ これは科学的に正しい
しかし斎藤知事の発信は、
- 「感染した鶏卵・鶏肉を食べても感染しない」
と受け取れる言い回しになっており、
・どの段階で除外されるのか
・なぜ安全なのか
・どんな条件が前提なのか
が一切説明されていない。
これは「説明責任を果たした」とは言えません。
本来、行政トップがやるべき「安心のさせ方」
県民を安心させる発信には、最低限次の3点が必要です。
- 不安点を正確に言語化する
- 「感染した鶏や卵が食卓に並ぶのでは?」
- 制度・仕組みで遮断されていることを説明する
- 発生農場は即時殺処分
- 流通停止
- 検査体制
- 生活上の行動指針を示す
- 「普通に調理・購入していれば心配ありません」
ところが斎藤知事の発信は
❌ ①を飛ばし
❌ ②を十分に説明せず
❌ ③も曖昧
で、**「結論だけを投げて終わり」**になっている。
これでは県民は安心できません。
県民が求めているのは「結論」ではなく「納得」
行政トップに求められるのは、
- 専門的に正しい結論を述べること
だけではありません。
特に危機時には、
- なぜそう言えるのか
- どんな仕組みでリスクが遮断されているのか
- 県民は何をすればよいのか
を分かりやすく説明し、納得してもらうことが不可欠です。
今回の発言は、結論だけを示し、そこに至る説明を省略しています。これは、県民の不安を軽視しているように受け取られても仕方がありません。
大規模災害時に重なる危うさ
この説明姿勢は、大規模災害が発生した場合を想像すると、より深刻な問題をはらんでいます。
災害時に県民が本当に知りたいのは、
- 何が分かっていて、何が分かっていないのか
- なぜ今その判断をしているのか
- 状況が変わったらどう対応するのか
です。
ところが今回と同じ姿勢であれば、
- 「安全です」
- 「影響はありません」
- 「想定の範囲内です」
といった結論だけの説明に終始し、理由や条件が語られない恐れがあります。
これは安心につながるどころか、
「本当のことを言っていないのではないか」
という不信感を生みます。
大規模災害時の不安は、具体的には、
- 電気・ガス・水道・通信といったライフラインの停止
- 食料・飲料水の不足
- 正確な情報が届かないことによる情報不足
- トイレ不足などを含む衛生環境の悪化
- 避難所生活におけるプライバシーの欠如、病気、運動不足
- 避難時の道路混雑や転倒などの危険
- 持病の薬や医療・ケア用品の不足
など、多岐にわたります。
こうした状況で、行政トップが
「全てに対応していますので、ご安心いただきたい」
と述べるだけでは、説明になりません。
県民が安心するために必要なのは、
- 誰が対応しているのか
- どのような体制で対応しているのか
- いつ頃までに何が回復する見込みなのか
- どの程度まで不安が解消されるのか
を、分かる範囲で具体的に伝えることです。
不確実な点があれば、
「現時点では分かっていない」
と正直に伝え、次に説明する時期を示すことも重要です。
これらを示さずに『安心してください』と言われても、県民は安心できません。
これまでの県政と共通する構図
この説明不足の問題は、鶏インフルエンザ対応に限ったものではありません。特に象徴的なのが、公益通報者保護法や情報漏洩問題における知事の説明姿勢です。
この問題は、今回が初めてではありません。
- 公益通報問題での説明不足
- 情報漏洩事案でのテンプレ的な回答
- 問題が起きても詳細を語らない会見対応
公益通報者保護法・情報漏洩問題でも同じ説明パターン
例えば、公益通報者保護法に関して知事は、
「体制整備義務につきましても、法定指針の対象について、3号通報も含まれるという考え方がある一方で、これは内部通報に限定されるという考え方もあります」
と述べるにとどまっています。
また、情報漏洩の教唆についても、
「漏えいの指示をしていない認識に変わりはない」
という結論のみを繰り返しています。
ここでも共通しているのは、
- なぜその解釈に立つのか
- 他の解釈がなぜ採用されないのか
- 事実関係をどう整理しているのか
といった判断に至るプロセスが一切説明されていない点です。
結論だけを提示し、その途中経過を語らない。この姿勢は、今回の鶏インフルエンザ発言と全く同じ構造です。
これらに共通するのは、
説明すること自体をリスクと捉え、最小限に抑えようとする姿勢
です。
しかし、危機管理において最も重要なのは、
- 不完全でも説明を重ねること
- 県民と同じ情報を共有すること
です。
説明を避ける姿勢は、結果として県政への信頼を削っていきます。
本当に必要なのは「安心させるための言葉」
もし知事が、次のように説明していれば、印象は大きく違ったはずです。
鳥インフルエンザが発生した場合でも、感染した鶏や卵は流通しない仕組みになっています。さらに、通常の調理でウイルスは不活化されます。日常の食生活で過度に心配する必要はありません。
これは特別な技術や知識ではありません。
県民の不安を想像し、それに正面から答えようとする姿勢の問題です。
おわりに
今回の鶏インフルエンザ発言は、
大規模災害が発生した時にも、県民が納得できる説明がなされないのではないか
という強い懸念を抱かせるものでした。
県政に必要なのは、
- 結論を押し付けることではなく
- 県民が理解し、判断できる材料を示すこと
です。
危機時こそ、説明責任の果たし方が問われます。今回の発言は、その姿勢が十分でないことを示していると言わざるを得ません。





