知事のSNSは「私企業の広告素材」なのか―淡路梅薫堂の写真問題が突きつけた公私混同の構造

兵庫県のフィールドパビリオン関連事業をめぐり、斎藤元彦知事が淡路島の線香メーカー「淡路梅薫堂」を訪問した際に撮影された写真が、同社の商品販売ページや広告に使用されていることが話題となっている。

この件について、アークタイムズの尾形記者が定例記者会見で知事に質問したが、そのやり取りは、単なるSNS利用の問題を超え、知事の公私の線引きと県政の公正性という、極めて重要な論点を浮き彫りにした。

問題は「写真」ではなく「権限と影響力」

まず確認しておきたいのは、この問題の本質は「写真を撮ったこと」や「SNSに投稿したこと」ではない。

問われているのは、

  • 知事という公的立場の人物が
  • 特定企業の商品と一体化した写真を発信し
  • それが私企業の商業利用に使われ
  • それに対して是正や制限を行わない姿勢を示した

という構造そのものである。

知事の影響力は、一般のインフルエンサーとは質が違う。
行政のトップという立場が持つ権威・信頼・象徴性は、企業にとって極めて大きな価値を持つ。

だからこそ、そこには慎重な線引きと説明が求められる。

「承知していない」という責任回避

尾形記者の「知事が企業の宣伝に出るのは中立性・公正性の観点から聞いたことがない」という問いに対し、知事はこう答えた。

「詳細は承知していません」

しかし、この答弁には強い違和感が残る。

  • 現地を訪問したのは知事本人
  • 商品を手にポーズを取ったのも本人
  • その写真をSNSに投稿したのも本人

それにもかかわらず、「知らない」「詳細は分からない」というのは、管理責任の放棄に等しい。

抽象論へのすり替えと、ルール不在

さらに知事は、

「私自身のSNSは地場産業振興を目的として活用している」

と述べた。

しかし、これは質問への答えになっていない。
問われていたのは、

  • 県内企業が知事の写真を商業利用してよいのか
  • それを制限・是正する意思があるのか

という、具体的な運用ルールの話である。

ところが知事は、最終的に

「それぞれの判断で適切に運用されることが大事」

と述べ、利用の可否を完全に第三者任せにした。

「何もしない」ことが確定した瞬間

尾形記者は、この答弁を受けてこう指摘した。

「何もしないということで非常に驚きました」

この発言は、感情的なものではなく、記者として極めて妥当な反応だ。

なぜなら、このやり取りによって、少なくとも次の点が事実として確定したからだ。

  • 知事は、自身のSNS写真が私企業の広告に使われても是正しない
  • 商業利用を制限する基準を示していない
  • 特定企業だけが利益を得る構造を問題視していない
  • 県としての統一的なルールを示していない

「違法ではない」で済ませてよいのか

この問題に対し、「違法ではない」という反論が必ず出てくる。

しかし、県民が問うべきなのは、「法律に違反しているか」だけではない。

  • 公的立場の影響力が、誰に、どのように使われているのか
  • それが公平・中立に扱われているのか
  • 県民に対して説明可能な状態なのか

である。

もしこれを容認するなら、

  • フィールドパビリオン参加企業なら使っていいのか
  • 知事と写真を撮れた企業が有利になるのか
  • 他の県内企業との公平性はどう担保されるのか

といった疑問に、誰も答えられない。

問われているのは「姿勢」そのもの

今回の会見で浮かび上がったのは、斎藤知事が自らの影響力が私企業の利益に使われることへの問題意識を示さなかったという事実だ。

説明責任を果たさず、ルールも示さず、「それぞれの判断」に委ねる。

この姿勢こそが、県政への不信感を生み続けている原因ではないだろうか。

県民が求めているのは、完璧な対応ではない。
「どう考え、どこまでを許容し、どこからを線引きするのか」
その説明である。

その説明がない限り、この問題は決して小さな話では終わらない。