広島県と兵庫県のロジック比較― なぜ結論が正反対になるのか ―
今回の牡蠣大量死への対応を整理すると、広島県と兵庫県では、政策の積み上げ方(ロジック)が根本から異なることが分かります。
これは感情論ではなく、因果関係の組み立ての違いです。
目次
広島県のロジック
「今を止めず、将来につなぐ」
広島県の対応は、段階ごとに明確な目的があります。
① 無利子融資で「時間を買う」
- 今期の資金繰りを確保
- 廃業・倒産を防ぎ、来年まで事業をつなぐ
👉 ここは「延命」ではなく、次の手を打つための時間確保。
② 再養殖用いかだへの直接補助で「赤字を減らす」
- 再生産に不可欠ないかだを補助
- 失われた自己資本の一部を公が肩代わり
- 共済・融資では埋まらない赤字を圧縮
👉 事業を続ければ、赤字は来期以降で回収できる
という前提を成立させている。
③ 国の支援で「将来も生き残る事業体」を作る
- 協業化
- 規模拡大
- 環境変動対応型養殖への転換
👉 今を守った上で、国策につなげる
という、非常に合理的な三段構え。
広島県ロジックの結論
今年の赤字は、
来年以降の事業継続で回収できる。
だから、今は絶対に壊さない。
兵庫県のロジック
「つなぐが、立て直さない」
一方、兵庫県の対応を同じ視点で整理すると、ロジックが途中で破綻していることが分かります。
① 無利子融資で「つなぐ」
- これは広島県と同じ
- ただし、融資しかない
👉 赤字は減らず、借金だけが残る。
② 観光コンテンツの磨き上げで「集客を増やす」
- フィールドパビリオン等の観光施策
- 牡蠣を“応援”する名目での観光投資
👉 ここでロジックが飛躍します。
③ しかし、メインコンテンツである「牡蠣」がない
- 8〜9割が死滅
- 生産量が戻らない
- 業者が廃業すれば、供給も消える
👉 集客しても、
- 食べる牡蠣がない
- 主役が不在
- 期待外れの体験
となり、観光客離れを招く。
④ 観光が伸びないため、国の支援も生かせない
国の政策は、
- 協業化
- 再生産
- 構造転換
が前提。
しかし、
- 業者が廃業
- 生産基盤が崩壊
すれば、国策に「乗る主体」そのものが消える。
兵庫県ロジックの結論
融資で一時的につなぐが、
赤字は減らない。
観光は空回りする。
国策にも乗れない。
結果として、牡蠣業者が壊滅する。
ロジック比較(要約表)
| 段階 | 広島県 | 兵庫県 |
|---|---|---|
| 資金繰り | 無利子融資 | 無利子融資 |
| 赤字対策 | 直接補助で圧縮 | なし |
| 生産基盤 | 再養殖を守る | 守らない |
| 観光との関係 | 生産回復後に活用 | 生産不在で先行 |
| 国策との接続 | 可能 | 不可能 |
| 最終結果 | 産業維持 | 産業崩壊 |
なぜここまで差が出るのか
差の原因は一つです。
因果関係を最後まで考えているかどうか
広島県は、
- 「次に何が起きるか」
- 「それを防ぐには何が必要か」
を、段階的に積み上げています。
兵庫県は、
- 施策が点在
- 因果がつながらない
- 最終的な結果を想定していない
ように見えます。
牡蠣が無ければ、観光は成立しない
牡蠣が無ければ、観光は成立しない。
産業が無ければ、国策も生きない。広島は「産業を起点」に考え、
兵庫は「施策を並べている」。
人を見ず、因果を見ず、政策に固執する県政
今回の牡蠣大量死をめぐる一連の対応で、最も深刻なのは「支援の厚い・薄い」ではありません。
本当の問題は、
優秀な現場職員の意見を十分に聞かず、記者からの指摘も聞かず
因果関係を最後まで考えず、
自らの目玉政策に固執した結果、
本当に助けるべき人を助けていないこと
にあります。
現場には「分かっている人」がいる
水産漁港課をはじめ、県庁には、
- 養殖業者の経営構造を理解している職員
- 共済や融資の限界を分かっている職員
- 「このままでは廃業が続出する」と分かっている職員
が、確実に存在します。
問題は、その声が政策に反映されていないことです。
因果関係を最後まで考えていない政策判断
政策判断に必要なのは、
- この施策を打つと、次に何が起きるのか
- その結果、誰が救われ、誰が切り捨てられるのか
- 最終的に、県全体にどんな影響が出るのか
という、因果関係の連鎖を最後まで追う視点です。
広島県は、
- 融資 → 再生産支援 → 国策接続
という因果を積み上げました。
一方、兵庫県は、
- 融資 → 観光施策
と飛躍し、
「牡蠣がなければ観光は成り立たない」
という最も基本的な因果
を見落としているように見えます。
目玉政策が「目的」になってしまった危うさ
本来、政策は手段です。
- 産業を守るため
- 県民の生活を守るため
に存在します。
しかし今回の対応を見ると、
政策そのものを正当化することが目的化していないか
という疑念が拭えません。
- フィールドパビリオンを生かしたい
- 観光施策につなげたい
その思いが先行し、
今、倒れそうな牡蠣業者を守るという
最優先課題が後回しになっている
ように見えるのです。
本当に助けるべき人とは誰か
今回、最も支援を必要としているのは、
- 8〜9割の牡蠣が死んだ養殖業者
- 共済に入れず無補償の小規模業者
- 融資だけでは再起できない事業者
です。
彼らを守らなければ、
- 生産基盤が崩壊し
- 観光も成立せず
- 国の支援も生かせず
すべてが失われる。
問われているのは「政策の巧拙」ではない
問われているのは、
誰の声を聞き、
どこまで考え、
誰を守るのか。
優秀な職員の専門的な意見を尊重し、因果関係を最後まで考え、政策を手段として使う。
それができなければ、どれほど立派な政策を掲げても、
県政は人を救えない
ということを、今回の牡蠣問題は示しています。






