斎藤知事の問題をやさしく解説|何をしたのか簡単に知ろう

2024年の百条委員会の様子は、全国でも報道されていましたが、11月の知事選挙で当選後はあまり報道されなくなっている、兵庫県知事の斎藤元彦氏について、何をしたのか簡単にまとめて、分かりやすくご説明します。

斎藤知事とは?簡単なプロフィール

斎藤元彦(さいとう・もとひこ)氏は、2021年に兵庫県知事選で初当選し、当時43歳という若さで全国最年少の知事として注目されました。

  • 元:総務省キャリア官僚
  • 生年:1977年
  • 出身:兵庫県神戸市須磨区
  • 学歴:東京大学経済学部卒

なぜ「何をした?」と注目されているのか

2024年の知事定例記者会見で当時の県民局長が県内10カ所に送付した告発文書に対して「嘘八百、公務員失格」と発言したことで注目されるようになりました。告発文書への対応を巡って、公益通報者保護法違反や地方公務員法違反(情報漏洩)や再選を果たした知事選での公職選挙法違反などを指摘されています。

文書問題第三者委員会

贈答品が多かった

コーヒーメーカー、ロードバイク、ゴルフクラブ、スポーツウェア、スキーウェア、竜山石の湯飲み、紅ズワイガニなどの「おねだり」疑惑を指摘されました。

知事は県北の漁業協同組合を視察した際、お土産に紅ズワイガニ二杯を受け取り自宅に持ち帰りました。

紅ズワイガニについては、一緒に随行した職員の方は受領を辞退されました。視察先の組合とは利害関係が無いとは言い切れない状況があります。これらについては他から疑念を招くことの無いよう慎重な行動が必要であったと思われます。

政治資金パーティーを巡る問題

信用保証協会の幹部が、その名刺を配ってパーティー券販売活動の一部を担ったことは協会の公的イメージや業務の中立公平性に対する信頼を傷つけかねません。幹部には慎重な行動が求められたと考えます。

プロ野球球団優勝パレード

この件については、背任罪で告発がなされているようですから、最終的にはその結果を待たなければなりません、しかし、補助金の予算執行は、金融機関の中小企業に対する伴走支援についての報告書を提出した後でなければ金庫に補助金は支払われません。その意味で文字通りのキックバックはあり得ません。これを見返りとしても先ほど述べた時系列からすると、本調査委員会としては、両者にはその関係は無かったのではないかと考えております。

パワハラについて

20m歩いたことで叱責した

出張先の入り口に向かうエントランスの地下には埋蔵物がございました。恐らく遺跡では無いかと思われます。エントランスが車両侵入禁止なっていたのは、その埋蔵物を保護するためです。重量物が乗ってはいけなかったからです。

しかし、斎藤知事は車が車止めの前で止まるとロジが不適切であると考えて車から降りて理由を聞くこと無くいきなり車止めを持ち上げるしぐさをして担当者を叱責しました。

万博の事業の知事レク

斎藤知事は大阪府が万博の目玉にし知事も重点を置いていた事業について知事レクを受けることになっていました。ところがレクの日の朝、新聞が事業の内容を報道しました。すると知事は「この記事は何だ、この事業は自分の直轄である、勝手にやるな」と強く叱責して職員が事情を説明しようとしても聞こうとしませんでした。

そして、「やり直し」と述べて協議を打ち切ってしまいました。

県立美術館休館

県立美術館のメンテナンスについては令和4年度の補正予算で議決されていました。美術館のカレンダーには4月の時点で休館のお知らせが掲載されています。

しかし、知事は教育長たちが知事室にはいると、事情を聞くこと無く「聞いていない。どうして夏休みに休館するのか?発表が急過ぎる」と叱責しました。そして、事情を説明しようとしても、聞こうとしませんでした。

教育長は「すみません」と何度も謝るしかありませんでした。

大阪湾内の埋め立て事業

令和3年9月。大阪湾内の埋め立て事業に関する新聞報道を見て、担当職員を知事室に呼び事情を聞くこと無く「県として意思決定していないことを先に出すのは良くない。許せない」と述べて机を叩いて叱責しました。

SDGs選定書授与式

令和5年度SDGsの未来都市に選定されました。また、その事業がモデル事業に選定されました。表彰式は5月22日の月曜日に東京で行われる予定でした。知事は5月19日の金曜日夜10時を過ぎてから「東京での授与式に報道機関が来ないのはおかしい、問題である。何とか明日追加対応して取材に来るよう交渉して欲しい」と呼びかけました。担当幹部職員は翌土曜日報道各社と交渉しましたが、良い返事を得ることは出来ませんでした。そこで、月曜日は職員を東京に派遣して動画を撮影する、そして報道各社に持ち込むと言うことにしました。しかし、マスコミはそれぞれの社においてニュースバリューの有無とその重要度を判断して、取材するか否かを決めます。また、報道するかを決めます。相手の決めることは職員が必ず実現できることではありません。これは高すぎる要求だと思います。

はばタンPay

知事協議の際、知事はうちわを見て、ため息をつき、舌打ちをしました。「いったに何がいけなかったのだろう」と思っても職員はなかなか分かりませんでした。結局これは、うちわに知事のメッセージが入っていない。顔写真が入っていないことだと言うことが分かりました。そこで、担当職員は、うちわを差し替えることを考えましたが、時期的に難しいと言うことで、知事のメッセージと顔写真のはいったうちわを追加発注することになりました。

夜間休日を問わないチャット

令和5年12月までの9ケ月間のチャットを我々は点検しましたが、平日午後8時以降知事と職員がチャットのやり取りをした回数は38回です。そのうちには日付が変わってから行われたものもあります。一地番遅い交信時間は午前3時40分です。土日祝日のやり取りも16回を数えました。そのうち7回は午後8時以降に行われています。これらは通常の業務に関してのチャットのやり取りです。

デジタルで繋がっていること自体による負荷やストレスも無視出来ません。夜間休日に行われたチャットのやり取りは、職員のプライベートな生活時間を侵害するものです。

パワハラの処分無し

職員が1件でパワハラすれば、懲戒処分(実績あり)ですが、斎藤知事は11件のパワハラを認定されていますが、「襟を正して再発防止をしていく」と述べるにとどめ、自らの処分を否定した。極めて恣意的な対応で、ほとんどの人は納得出来ません。

公益通報について

保護法はもっぱら公益目的でなされた通報のみを保護するものではありません。本調査委員会は、本件文書の作成配布には種々の目的が混在しているとは考えました。しかし、不正の目的で行われた通報では無いとも判断いたしました。

本件文書には、数多くの真実と真実相当性のある事項が含まれています。嘘八百として無視することの出来ないもの、むしろ県政に対する重要な指摘を含むものもあったと認められます。

利害関係者の関与は極めて不当

利害関係者の関与を排除すべきと言うことは内部公益通報について明言されていところです。しかし、その制度の趣旨を考えれば、本件で利害関係者が関与したことは制度趣旨に反するものであって、極めて不当なものではないかと考えるのが私どもの意見であります。

通報者探索行為

保護法11条と指針は、通報者を公益通報に該当する事実であれば通報者を探索してはならないと定めています。しかし本件では、3月21日のメールチェックに始まり25日の県民局に臨んでの局長への尋問など、通報者探索行為が行われました。これは違法な行為です

公用パソコンの引き上げ

公用パソコンの引き上げが行われました。これは違法な通報者探索の結果として行われたものですから、我々はこれを違法だと考えます

不利益取り扱いについて

不利益取り扱いの問題について申し上げます。本件では、3月27日に退職保留と言う人事処分がありました、これは一つの不利益な取り扱いだろうと思います。

処分をして良いか

この懲戒処分は裁量権の範囲を超えたものである。ないしは、その権利を濫用したものであると考えるのが相当だろうと言うことで懲戒処分のうち本件文書を作成配布したことを理由とする部分は効力が無いと言うのが我々の意見です。

嘘八百、公務員失格

元県民局長が作成した文書について、「本人も認めていますが、事実無根の内容が多々含まれている内容の文書を職務中に職場のPCを使って作成した可能性があると言うことです。ありもしないことを縷々述べた内容を作ったことを本人も認めています」と発言しました。しかし、元局長は事実無根の内容の文書を作ったと認めたことはございません。事情聴取も文書内容の調査もまだ十分なされていない段階で実際には元局長が認めていないのに事実で無いような文書を作成したことを本人が認めたと発言することは、極めて不適切であると考えます。

情報漏洩第三者委員会

令和6年4月4日か5日頃E氏がD氏同席の席上で知事に対し、元県民局長の公用パソコン内に元県民局長の私的情報に係る大量の文書等があることが分かったなどと報告したところ、知事はE氏に対し「よし、そのような文書があることを議員に情報共有しといたら」と指示したと言う旨の供述をされました。

まず知事から指示があった時に同席していたとされるD氏は、令和7年3月4日に行われた事情聴取の際、昨年4月上旬頃、元県民局長の私的情報の件を含めて知事に報告した際、色々な案件がある中で、その私的情報があったことを含めて根回しと言うか、議会の執行部に知らせておいたら良いんじゃないか、と言う趣旨と理解出来る知事からの発言があった。

またその後知事からそのような指示があったことを副知事に報告した際には、副知事が「そらそうやな、必要やな」そう言う発言があったと思っているとも供述しています。ただ、知事からは誰とどのように情報共有しておくと言うような具体的なことは無かったと言うことでありました。以上の供述からしますと、D氏としては知事からE氏に対して元県民局長の私的情報そのものを取り上げて、県議会と情報を共有しておくようにとの指示があったものではないけれど、他の重要審議事項と合わせて元県民局長の私的情報の内容についても議会の執行部に根回しをしておくようにとの指示があったと理解したと言うことが伺われます。

一方知事は、令和7年3月6日に行われた当委員会の聴取に於いて概要を次のように述べて、この事実を否定しておられます。

E氏にそう言った情報を議会の執行部に共有しておいた方が良いと言う発言をしたことも無い。ただ、例えばどこの自治体でもあるように予算とか大学無償化とかの政策に関することで議会との情報共有を指示することもあるが、今回はそう言ったことについて議会筋と情報を共有しておくようにと言うような指示をE氏にしたことも無い。E氏は総合調整の窓口である総務部長として独自の判断で議会側との情報共有。いわゆる根回しをしたものと思う。このように供述されています。

多数の懸案事項がある中で知事が総務部長であるE氏対し事項を特定せずに一般的に議会筋との共有を指示することがあってもおかしくは無いと思われるにも関わらず、前掲の通り、本件については一般的なパターンでの情報共有の指示すら否定する知事の供述には不自然さも否めないと考えました。

D氏及び元副知事の供述が時期及び内容においてE氏のこの点に関する新主張とほぼ一致していると言うことからすれば、これらの供述の信用性を否定することは出来ないと評価するのが相当である。

これと整合しない知事の前記供述は採用することが困難と言うべきであると言う結論に達しました。

公職選挙法違反

兵庫県の斎藤元彦知事が再選した知事選を巡り、県内のPR会社にSNSなどによる広報を依頼し報酬を支払ったのは公職選挙法違反(買収、被買収)の疑いがあるとして、弁護士と大学教授が12月1日、斎藤氏と同社代表に対する告発状を神戸地検と兵庫県警に送付したと明らかにした。

告発状などによると、斎藤氏は知事選でPR会社の代表にSNSなどを通じた「戦略的広報業務」を依頼。「選挙運動をすることの報酬」として71万5千円を支払ったことが、公選法が禁じる買収・被買収に当たるとし、郷原弁護士は会見で「選挙運動の対価ではないという弁解は通らない」と指摘した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF012R70R01C24A2000000(出典:日本経済新聞)

選挙に主体的・裁量的に関わったことを赤裸々に記載したmerchu折田楓氏のnoteの魚拓

神戸地検と兵庫県警は2月7日、PR会社の関係先を同法違反の疑いで家宅捜索した。

検察が先月(7月)、知事から任意で数時間事情を聴いたことが分かりました。

斎藤知事は違法性について否定する説明をしたとみられています。

警察が6月20日、捜査結果をまとめた書類を検察庁に送ったことが捜査関係者への取材で分かりました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250620/k10014840051000.html(出典:NHK)

斎藤知事「公職選挙法違反」が“セーフ”でも、今度は「政治資金規正法違反」で“詰み”? 神戸地検から聴取…罪に問われる可能性は【選挙法務のプロが解説】(出典:弁護士JPニュース)

説明責任を全く果たさない斎藤知事

第三者委員会の認定を受け入れず、受け入れない理由についての説明責任を全く果たさない。

全く嚙み合わない斎藤知事の記者会見

30回繰り返された「真摯に受け止めたい」 第三者委の結論に主張譲らぬ兵庫・斎藤知事(出典:産経新聞)

まとめ|斎藤知事は「何をした」のか簡単整理

公益通報者保護法違反

県民局に臨んでの局長への尋問など、通報者探索行為をしたことは違法な行為です

公用パソコンの引き上げが行われました。これは違法な通報者探索の結果として行われたものですから、我々はこれを違法だと考えます

地方公務員法違反(情報漏洩)

側近3人は、「よし、そのような文書があることを議員に情報共有しといたら」と指示したと供述していますが、知事のみが指示を否定している不自然な状況です。

兵庫県の斎藤元彦知事ら3人に対する地方公務員法(守秘義務)違反容疑で神戸地検に告発状を提出した、上脇博之(ひろし)・神戸学院大教授は10日の会見でこう述べ、知事らを批判した。告発状に名を連ねた代理人弁護士は82人に上る、異例の態勢だ。

公職選挙法違反

兵庫県の斎藤元彦知事が再選した知事選を巡り、県内のPR会社にSNSなどによる広報を依頼し報酬を支払ったのは公職選挙法違反(買収、被買収)の疑いがあるとして、弁護士と大学教授が12月1日、斎藤氏と同社代表に対する告発状を神戸地検と兵庫県警に送付したと明らかにした。

日本の民主主義の危機

斎藤知事の問題は、日本の民主主義や法治国家としての在り方を否定するもので、政治に対する信頼をも失う恐れがある事態です。

自分が起こした問題について何一つ責任を取らない態度は、他の首長にも現れて来ていて、日本の政治がどんどん劣化して行くのを目の当たりにしている状態です。

第三者委員会から違法の認定を受けても、複数の刑事告発が受理されても説明責任も果たさない斎藤知事の言動は、これは、今の兵庫県だけの問題では無く日本の民主主義の危機であると言えます。