斎藤知事「トップは孤独」発言にみる“相談できないリーダー”の危うさ
目次
第三者委違法認定後も主張を変えない“独断型トップ”の問題点
兵庫県の斎藤元彦知事は、再選から1年となるのを前に各局の合同インタビューに応じ、「トップは孤独だと覚悟してやっていた」と語りました。
しかし、その姿勢が県政の混乱を長期化させているのではないかと感じざるを得ません。
「対応は適切・適法」——第三者委違法認定後も変わらぬ主張
斎藤知事は、告発文書問題について次のように述べています。
「初動から懲戒処分の対応までは適切・適法だった」
しかし実際には 第三者委員会が“違法”と認定 し、国会でも複数の議員が問題提起したものです。
それにもかかわらず、知事が頑なに「適法」と言い続けるのは、事実認識と社会常識のズレを象徴しているように見えます。
しかもその主張には、
・なぜ第三者委員会が違法と判断したか
・職員探索が法の趣旨に反するという指摘をどう受け止めているか
といった説明が一切ありません。
批判を受けても自分の判断を修正できない
——これは行政トップとして極めて危険な特徴といえます。
「トップは孤独」発言が示す“相談相手の不在”
インタビューで記者が「相談相手はいるのか」と問うと、知事はこう答えました。
「最終的には自分で判断するもの。トップは孤独だと覚悟している」
もちろん最終判断はトップが下すべきものです。
しかし、通常のリーダーは次のプロセスを踏みます。
- 法務の専門家に相談する
- 行政実務に知見の深い幹部職員の意見を聞く
- 情報公開・危機管理の専門ブレーンに確認する
- リスクシナリオを踏まえて判断する
つまり「専門家の意見を踏まえたうえで最終判断」が基本です。
ところが斎藤知事の発言は、
“誰にも相談せず、自分の感覚だけで判断している”
——そのように受け取られても仕方がありません。
実際、これまでの言動を見ると、
- 第三者委員会の違法認定を否定
- 記者会見での質問にも具体的回答を拒否
- 過去の発言の矛盾を問われても修正せず押し通す
- 県側が準備した謝罪を無視
- 失敗を認めず、責任を外部へ転嫁する傾向
と、“相談せず独断で決めてしまうリーダー”の典型的な特徴が表れています。
本当に「孤独」なのではなく、“誰の意見も聞けない”だけでは?
多くの行政組織で問題が起きるのは、トップが孤独だからではなく、
「助言を聞かない」
「耳の痛い意見を排除する」
「自分に都合の悪い情報を遮断する」
といった “独裁型リーダー” のときです。
今回のインタビューからは、
- 内部に相談できる相手がいない
- 知事自身が周囲の信頼を失っている
- あるいは、そもそも他者の意見を聞く気がない
といった可能性も読み取れます。
特に第三者委員会から違法認定を受けても、その内容に向き合わず「自分は正しい」と繰り返す姿勢は、もはや“孤独だから”では説明できません。
「誰の言葉も聞かないリーダー」になっているのでは?
そう疑われても仕方がない状況です。
交流分析(TA)の「人生の立場」から見る斎藤知事の対人姿勢
——「私はOK/あなたはOKではない」型リーダーが組織にもたらす危機
兵庫県の斎藤元彦知事の言動には、第三者委員会で違法と認定されても認めない姿勢や、過ちを外部に押し付ける一連の行動など、共通する特徴があります。
これらを心理学の「交流分析(TA)」で整理すると、非常に理解しやすくなります。
交流分析における4つの「人生の立場」とは?
交流分析では、人が無意識に採用している“世界観”や“人間観”を4つに分類します。
| 人生の立場(Life Position) | 意味 |
|---|---|
| ① 私はOK/あなたもOK | 成熟した大人のあり方。問題解決型。 |
| ② 私はOKではない/あなたはOK | 自己評価が低く、他人に従属しやすい。他人の評価が気になる。 |
| ③ 私はOK/あなたはOKではない | 他者を見下し、自分が正しいと考える。独裁的。 |
| ④ 私はOKではない/あなたもOKではない | 世界を悲観的に捉え、攻撃・破壊行動につながることも。 |
この中で最も健全なのは①ですが、
斎藤知事の行動パターンを見る限り、最も近いのは ③「私はOK/あなたはOKではない」 です。
斎藤知事は「私はOK/あなたはOKではない」型なのか?
この立場の特徴は次の通りです。
- 自分の判断が絶対に正しいと考える
- 他者の意見や忠告を価値あるものと認めない
- 部下・関係者を信頼せず、相談しない
- ミスを他人のせいにしやすい
- 批判されると強く反発し、攻撃性を見せる
- 立場が弱い相手ほど支配的に接する
- パワハラをしやすい心理構造
これらは、これまでの知事の行動と驚くほど一致します。
▼一致する行動例
- 第三者委員会が「違法」と認定したのに、
本人は今も「適法だった」と主張し続ける - 告発者探索や告発者への対応を指摘されても、
「自分は正しい」一点張りで修正がない - パワハラ10件認定されても、
「襟を正す」だけで処分を否定 - 記者会見で都合の悪い質問には答えないどころか、
質問者に敵意を向け犬笛を吹く - 困難が生じると委託会社や部下に
責任転嫁を図る発言を繰り返す - 「トップは孤独だ」と語り、
相談相手が存在しない(=他者を信頼できない)
すべてが2番目の人生の立場の特徴と整合します。
なぜこの立場だと、組織が混乱するのか?
「私はOK/あなたはOKではない」タイプのリーダーは、一見すると強くて自信があるように見えます。
しかし実際は、以下の理由から組織を壊していきます。
●① 他者の意見を取り入れない
=誤った判断が修正されない
●② 自分のミスを認めない
=責任転嫁が常態化し、信頼関係が崩壊する
●③ 批判に対して攻撃的
=組織内に恐怖と沈黙が広がる
●④ パワハラ傾向が強い
=職員が萎縮し、問題が表面化しなくなる
●⑤ 外部からの指摘も無視
=県政としての説明責任を果たせなくなる
現在兵庫県庁で起きている一連の問題は、この心理構造を持つリーダーがトップに立った場合の典型例といえます。
「孤独」なのではなく、“他者を信頼できない”だけ
インタビューで斎藤知事は、
「トップは孤独だと覚悟している」
と述べました。
しかし交流分析的に見ると、孤独なのは覚悟しているからではなく、
・他者を信じられない
・他人を自分より下に見てしまう
・助言を受け入れられない
という心理的構造が原因であり、
「孤独は結果であって、姿勢の問題」です。
つまり、
“孤独なリーダー”ではなく、
“他人を排除してしまうリーダー”
なのではないか、ということです。
県政に必要なのは“孤独を言い訳にしない”リーダー
政治家は最終決断者である以上、孤独に感じる場面は確かにあります。
しかしそれを理由に、
- 助言を聞かない
- 専門家を活用しない
- 法的リスクを軽視する
というのは本末転倒です。
県政運営は個人の意地や感覚で行うものではなく、法律・証拠・組織の知見・専門家の分析など、多角的な判断に基づくべきものです。
斎藤知事がこの姿勢を改めず、“自分だけが正しい”という考えを続けるなら、県政の混乱はこれからも収まらないでしょう。






