斎藤知事の地方公務員法違反(情報漏洩)容疑
元県民局長の私的文書が、元総務部長の井ノ本氏によって一部の県議会議員に漏洩した問題で、刑事告発されています。
目次
- 1 情報漏洩第三者委員会の報告書(抜粋)
- 1.1 兵庫県、元総務部長を停職3カ月 告発者の私的情報を漏洩(2025年5月27日)
- 1.2 元総務部長・井ノ本氏「誠に残念」と代理人通じコメント 正当性を主張したいとも強調(2025年5月27日)
- 1.3 斎藤知事「私は漏えいの指示していない」改めて否定 "知事の側近"が元県民局長の私的情報を漏えい…第三者委は『知事らの指示のもとに行われた可能性高い』(2025年5月27日)
- 1.4 兵庫文書問題第三者委“私的情報漏えい知事指示の可能性高い”(2025年5月27日)
- 1.5 漏洩認定の井ノ本氏だけでなく片山元兵庫県副知事も 側近の証言「斎藤知事の指示」で一致(2025年5月28日)
- 1.6 元兵庫県副知事、第三者委に反論 「漏洩ではなく適正な議会根回し」(2025年6月3日)
- 1.7 兵庫 斎藤知事 給与3か月間50%条例案提出 議会側からは反発も(2025年6月6日)
- 1.8 「首を吊ります」と辞職を迫ると「メンタルが大事ですよ」と受け流され… 斎藤元彦知事の「最側近」が“裏切り”を決意した理由(2025年8月15日)
- 1.9 通報者の私的情報漏えいで大学教授が斎藤兵庫県知事、片山元副知事、井ノ本元総務部長を神戸地検に刑事告発(2025年6月10日)
- 1.10 斎藤元彦・兵庫県知事らへの告発状受理 情報漏洩問題で地検(2025年8月20日)
- 1.11 元県民局長の“私的情報を漏洩”した元総務部長 9月1日付で「参事」にする人事を兵庫県が発表 競馬組合の副管理者に(2025年8月27日)
- 2 知事の指示があったとすれば重大事
- 3 まとめ
情報漏洩第三者委員会の報告書(抜粋)
令和6年4月4日か5日頃E氏がD氏同席の席上で知事に対し、元県民局長の公用パソコン内に元県民局長の私的情報に係る大量の文書等があることが分かったなどと報告したところ、知事はE氏に対し「よし、そのような文書があることを議員に情報共有しといたら」と指示したと言う旨の供述をされました。
まず知事から指示があった時に同席していたとされるD氏は、令和7年3月4日に行われた事情聴取の際、昨年4月上旬頃、元県民局長の私的情報の件を含めて知事に報告した際、色々な案件がある中で、その私的情報があったことを含めて根回しと言うか、議会の執行部に知らせておいたら良いんじゃないか、と言う趣旨と理解出来る知事からの発言があった。
またその後知事からそのような指示があったことを副知事に報告した際には、副知事が「そらそうやな、必要やな」そう言う発言があったと思っているとも供述しています。ただ、知事からは誰とどのように情報共有しておくと言うような具体的なことは無かったと言うことでありました。以上の供述からしますと、D氏としては知事からE氏に対して元県民局長の私的情報そのものを取り上げて、県議会と情報を共有しておくようにとの指示があったものではないけれど、他の重要審議事項と合わせて元県民局長の私的情報の内容についても議会の執行部に根回しをしておくようにとの指示があったと理解したと言うことが伺われます。
一方知事は、令和7年3月6日に行われた当委員会の聴取に於いて概要を次のように述べて、この事実を否定しておられます。
E氏にそう言った情報を議会の執行部に共有しておいた方が良いと言う発言をしたことも無い。ただ、例えばどこの自治体でもあるように予算とか大学無償化とかの政策に関することで議会との情報共有を指示することもあるが、今回はそう言ったことについて議会筋と情報を共有しておくようにと言うような指示をE氏にしたことも無い。E氏は総合調整の窓口である総務部長として独自の判断で議会側との情報共有。いわゆる根回しをしたものと思う。このように供述されています。
多数の懸案事項がある中で知事が総務部長であるE氏対し事項を特定せずに一般的に議会筋との共有を指示することがあってもおかしくは無いと思われるにも関わらず、前掲の通り、本件については一般的なパターンでの情報共有の指示すら否定する知事の供述には不自然さも否めないと考えました。
D氏及び元副知事の供述が時期及び内容においてE氏のこの点に関する新主張とほぼ一致していると言うことからすれば、これらの供述の信用性を否定することは出来ないと評価するのが相当である。
これと整合しない知事の前記供述は採用することが困難と言うべきであると言う結論に達しました。
兵庫県、元総務部長を停職3カ月 告発者の私的情報を漏洩(2025年5月27日)
兵庫県は27日、斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを内部告発した元県幹部の私的情報を漏洩したと第三者委員会に認定された井ノ本知明元総務部長を、同日付で停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF079UA0X00C25A5000000(出典:日本経済新聞)
元総務部長・井ノ本氏「誠に残念」と代理人通じコメント 正当性を主張したいとも強調(2025年5月27日)
兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を告発した元県民局長の男性の私的情報を元総務部長の井ノ本知明氏が漏洩(ろうえい)した問題で、経緯を調べていた県の第三者委員会が知事の指示による漏洩の可能性が高いと認定したことを受け、井ノ本氏は27日、代理人を通じて、「業務行為が情報漏洩と評価されたものであり誠に残念」などとするコメントを発表した。
https://www.sankei.com/article/20250527-BMDVQEX5FFMJHEWYI3XHE4ZOKA(出典:産経新聞)
斎藤知事「私は漏えいの指示していない」改めて否定 "知事の側近"が元県民局長の私的情報を漏えい…第三者委は『知事らの指示のもとに行われた可能性高い』(2025年5月27日)
私が漏えいについての指示をしたという可能性があるということも、指摘を委員会の方からされておりますけども、私としては改めて、漏えいに関する指示はしていないという認識に変わりありません。指示をしたという認識は全くございません。改めてお伝えをしておきたいというふうに思っております。ただ、県民の皆さんの信頼を損なうという状況にもなりました。組織の長として、誠に申し訳なく思っております。改めて皆さまにお詫びを申し上げたいというふうに思っております
https://www.mbs.jp/news/feature/kansai/article/2025/05/106662.shtml(出典:MBSNEWS)
兵庫文書問題第三者委“私的情報漏えい知事指示の可能性高い”(2025年5月27日)
兵庫県の斎藤知事の告発文書をめぐる問題で、県の第三者委員会は、文書を作成した元局長の私的な情報を元総務部長が県議会議員に漏えいしたと認定したうえで、漏えいが斎藤知事らの指示で行われた可能性が高いとする調査結果を発表しました。
県は、元総務部長を停職3か月の懲戒処分にしました。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20250527/2000094235.html(出典:NHK)
漏洩認定の井ノ本氏だけでなく片山元兵庫県副知事も 側近の証言「斎藤知事の指示」で一致(2025年5月28日)
斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発者の私的情報漏洩(ろうえい)問題で、県の第三者委員会に漏洩を認定された井ノ本知明氏は斎藤氏の最側近として知られた。第三者委の報告書や漏洩先となった県議の証言から浮かぶのは、斎藤氏らの指示の下、告発者をおとしめて疑惑を払拭しようと躍起になる井ノ本氏の姿。かつての側近の証言が「知事の指示」で一致する中、斎藤氏だけが否定を続けている。
https://www.sankei.com/article/20250528-676O6SL2LBIPRBR6U4CMAY2UNQ(出典:産経新聞)
元兵庫県副知事、第三者委に反論 「漏洩ではなく適正な議会根回し」(2025年6月3日)
兵庫県の斎藤元彦知事らを内部告発した元西播磨県民局長(故人)の私的情報を前総務部長が県議に漏洩(ろうえい)した問題で、片山安孝元副知事が3日、代理人弁護士を通じ、第三者調査委員会の報告書に反論するコメントを出した。前総務部長の行為は「必要かつ相当な範囲の議会根回しであり、適正な業務」とし、「秘密の漏洩に当たらない」と主張した。
https://www.asahi.com/articles/AST633QN0T63OXIE02RM.html(出典:朝日新聞)
兵庫 斎藤知事 給与3か月間50%条例案提出 議会側からは反発も(2025年6月6日)
兵庫県の斎藤知事は、告発文書を作成した元局長の私的情報の漏えいを受けて、みずからの処分として、給与の減額割合を3か月間引き上げ、50%とする条例の改正案を県議会に提出しました。議会側からは反発の声も上がっていて、今の定例議会で採決が行われるかどうかが焦点となります。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250606/k10014827671000.html(出典:NHK)
「首を吊ります」と辞職を迫ると「メンタルが大事ですよ」と受け流され… 斎藤元彦知事の「最側近」が“裏切り”を決意した理由(2025年8月15日)
井ノ本氏は、停職3カ月の懲戒処分に付されたが、漏洩は知事の指示に基づく「正当な業務だった」と反論。処分の執行停止の申し立てを行う方針を示すなど、徹底抗戦の構えを崩していない。 「最側近」とまで呼ばれた男が、ここにきて知事に不利な証言をしたのはなぜか。 「知事への批判が激しくなっていた昨年7月、井ノ本氏は他の側近2人と共に知事室を訪れ、直接辞職を進言したことがありました。その際、“(側近と報道され)自分だけでなく、家族も誹謗中傷に遭っている。(このままだと)首をつりますよ”と言って辞職を迫ったそうです。ところが知事から“メンタルヘルスケアを利用してください。メンタルが大事ですから”と受け流され、ひどくショックを受けたといいます」(前出の県庁関係者)
https://news.yahoo.co.jp/articles/1917800206613a29f8bef6bf0c3f4e245d829e96(出典:デイリー新潮)
通報者の私的情報漏えいで大学教授が斎藤兵庫県知事、片山元副知事、井ノ本元総務部長を神戸地検に刑事告発(2025年6月10日)
井ノ本元総務部長は職務上知り得た秘密を漏らした疑いがあるとしている。また斎藤知事には職務上知り得た秘密を漏らすことを命じ、あるいは、そそのかした疑い、片山元副知事には職務上知り得た秘密を漏らすことを故意に容認し、あるいはそそのかした疑いがあり、ともに厳重な捜査と処罰が必要であるとしている。
上脇教授は兵庫県在住で、全国82人の弁護士が告発代理人についている。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8b2ccc7bc5c102bb04e8d487fb5d57f5cb0f5939(出典:赤澤竜也)
斎藤元彦・兵庫県知事らへの告発状受理 情報漏洩問題で地検(2025年8月20日)
斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発者の私的情報漏えい問題で、井ノ本知明元総務部長が県議に漏らし、斎藤氏と片山安孝元副知事が関与した疑いがあるとして、上脇博之神戸学院大教授が神戸地検に出した地方公務員法違反容疑の告発状が20日、受理された。関係者が明らかにした。地検が斎藤氏の指示の有無などを慎重に捜査する。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF208G50Q5A820C2000000(出典:日本経済新聞)
元県民局長の“私的情報を漏洩”した元総務部長 9月1日付で「参事」にする人事を兵庫県が発表 競馬組合の副管理者に(2025年8月27日)
兵庫県の斎藤元彦知事のパワーハラスメントなどを告発した元県民局長の私的な情報を、複数の県議に漏らしたとして停職処分を受けていた元総務部長について、9月1日付けで参事とする人事を発表しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/079f6a56ea73cd3456d0d66d1ff6504059ec6403(出典:MBSNEWS)
知事の指示があったとすれば重大事
この問題は、地方公務員法に定められた守秘義務の違反、情報漏洩, および指示・教唆の有無という三重の法的・倫理的課題が折り重なっています。特に、組織のトップである知事の関与があったかどうか、それによって行政の透明性・信頼がいかに守られているかが焦点です。
今後は、刑事告発を受けた捜査の推移や、裁判所での法的判断が注目されます。
法的観点からの重大性
地方公務員法62条(秘密を守る義務)では、職員が「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」と定めています。
さらに、刑法の共犯規定(教唆・幇助)は地方公務員法違反にも適用されるとされており、総務省も「知事のような特別職にも及ぶ」と国会答弁で示しています。
つまり、知事自身が情報漏洩を直接しなくても、部下に命じたり、暗に容認しただけでも刑事責任を問われ得るのです。
政治的・行政的な重大性
県のトップ自らが法令違反を教唆したとなれば、組織全体の信頼が崩壊します。
公務員は知事の指揮監督下で働くため、指示があれば逆らえない構造にあります。そのため、**「権力による違法行為の強制」**という重みが出ます。
守秘義務は内部告発者や職員を守るための根幹であり、トップがこれを踏みにじれば、公益通報制度そのものが機能不全に陥ります。
県民・社会への影響
もし知事の教唆が事実なら、
- 県政の公正性や透明性に対する信頼喪失
- 公務員が安心して内部通報できない萎縮効果
- 知事のリーダーシップの正統性崩壊
につながります。
結果として、県民の行政に対する信頼を根底から揺るがす「統治危機」になります。
まとめ
斎藤知事に教唆があったと認定されれば、
- 刑事責任(地方公務員法違反の教唆犯)
- 政治的責任(辞任や失職を含む重大な責任)
- 行政的影響(職員の士気低下、公益通報制度の空洞化)
という三重の重大問題に直結します。