兵庫県だけが「消費者庁参事官からの依頼」と明記──公益通報者保護法説明会告知に透ける“特別な事情”とは?
2025年6月に改正・公布された公益通報者保護法に関する説明会が、全国の自治体で順次開催されています。
しかし、その告知文を各県のホームページで比較すると、兵庫県だけが明らかに異なる表現を用いていることがわかりました。
他県の告知文はほぼ一貫して、
- 「消費者庁職員を講師とした説明会」
- 「消費者庁による説明会が開催されます」
- 「改正内容について説明します」
というシンプルな文言です。
ところが兵庫県だけが、
「消費者庁参事官(公益通報・協働担当)からの依頼に基づき」
と、役職名まで具体的に明記して「依頼に基づき」記載しています。
この表現は、他県には一切見られない“異例の書き方”です。
本記事では、なぜ兵庫県だけがこのような表現を採用したのか、その背景にある政治的文脈を読み解きます。
目次
- 1 全国の告知文を比較すると一目瞭然
- 2 兵庫県だけが異質
- 3 なぜ兵庫県だけが「参事官からの依頼」と強調したのか?
- 3.1 ① 県として「自主開催」とは思われたくない
- 3.2 ② 国(消費者庁)が兵庫県を“特別な対象”として見ているため
- 3.3 ③ 行政的には通常あり得ない “役職レベルの明記”
- 3.4 ◎(1)県の判断ではない
- 3.5 ◎(2)県は独自に動いているわけではない
- 3.6 ◎(3)県内向け・庁内向けの“予防線”
- 3.7 ④ 結果として「当てつけ」のような表現に見える
- 4 兵庫県が“違法状態のまま”公益通報の説明会を開く矛盾
- 5 本来であれば、兵庫県は説明会を開く前にやるべきことがある
- 6 県民から見えるのは「自浄能力の欠如」と「責任回避」だけ
- 7 まとめ:兵庫県の説明会は「説明責任を果たす前の説明会」という倒錯
全国の告知文を比較すると一目瞭然
調査した各県の告知文では、以下のような文章が並んでいます。
●秋田県
改正内容等についての説明会を開催します。
●福岡県
消費者庁職員を講師とした説明会を実施します。
●鳥取県
消費者庁による説明会が開催されます。
●青森県
周知啓発の一環として消費者庁職員を講師とした説明会を開催します。
●宮崎県
消費者庁を講師とした説明会を開催します。
●岩手県
「改正内容に関する説明会」を開催します。
どの県も、
“誰が講師か” と “何の説明会か”
だけをシンプルに示しています。
兵庫県だけが異質
唯一、兵庫県の告知文だけが以下のように書かれています。
「消費者庁参事官(公益通報・協働担当)からの依頼に基づき」
これは明らかに他県と異なり、“依頼主の役職名まで明記する”という極めて珍しい表現です。
なぜ兵庫県だけが「参事官からの依頼」と強調したのか?
この特異な表現には、兵庫県特有の“政治的背景”が深く関係していると考えられます。
ポイントを整理すると次の通りです。
① 県として「自主開催」とは思われたくない
兵庫県は過去に、
- 公益通報者保護法違反とされる行為
- 通報者探索
- 知事による「嘘八百」「公務員失格」発言
- 第三者委員会による“違法行為の認定”を知事が事実上無視
といった問題が全国的に報道されてきました。
そのため、県が自主的に公益通報制度の説明会を開くと、
「不祥事の尻拭いとして開催しているのでは?」
と受け取られる可能性が高い。
そこで、
「国に依頼されたから開催している」
という建前を強調したかったと推測できます。
② 国(消費者庁)が兵庫県を“特別な対象”として見ているため
消費者庁は公益通報者保護制度の主管官庁です。
兵庫県の一連の通報者対応問題は、消費者庁が最も注視する領域の“ど真ん中” でした。
したがって、
- 国から兵庫県への指導
- 監視
- 改善要請
といった“特別の関与”があった可能性は高いと考えられます。
そのため、兵庫県としては
「参事官」という役職名まで具体的に記載
=国の強い関与を明示
という形になったのでしょう。
消費者庁大臣の答弁が示した“兵庫県に対する厳しいスタンス”
2025年11月10日の衆議院予算委員会で、
消費者庁の黄川田大臣は次のように答えました。
「消費者庁としては、斎藤知事から発言の訂正があったとは承知しておりません。」
これは単なる事務的回答ではなく、次のメッセージを含む“極めて重い発言”です。
大臣レベルで「兵庫県の対応は不十分」と明言したに等しい
通常、自治体の長の発言訂正について、大臣が “承知していない” と答えることは非常に稀です。
行政の世界では、
- 「確認中です」
- 「報告を待っています」
- 「県の判断を尊重します」
などと柔らかくかわすのが一般的です。
しかし今回の答弁は正反対。
県から訂正の報告は来ていない
→ つまり、県は訂正していない
→ 県としての対応が不十分である
という認識を、国の所管大臣が公の場で示したということです。
これは、兵庫県に対する国の信頼が完全に失われていることの証拠 だといえます。
「国が兵庫県を特別に監視している」という構図を強化した
この大臣答弁によって、次の構図がより鮮明になりました。
● 通報者保護の所管官庁=消費者庁
● 違法認定を受けた自治体=兵庫県
● 適切な訂正・説明も行わない自治体=兵庫県
● それを国会の場で国が問題視している
つまり、兵庫県は今や 「特別監視対象」 という扱いになっていると言ってよい。
その結果、「参事官からの依頼」が文章として残された可能性が高い
今回、兵庫県の説明会告知だけに、
「消費者庁参事官(公益通報・協働担当)からの依頼に基づき」
とわざわざ書かれていたのは、偶然ではありません。
国(消費者庁)の内部では、兵庫県に関する対応はすでに“通常案件”ではなく、
- 県の自主的対応を信用していない
- 県に任せると誤った運用をされる可能性がある
- 県への直接指導が必要
- 県に対して公式記録を残す必要がある
という判断が働いていると推測できます。
この背景に、
大臣の「訂正を承知していない」発言は確実に影響しています。
兵庫県としては逃げ道として「国から依頼された」と書く必要があった
兵庫県側に立って考えると、この状況は非常に不利です。
- 知事の言動が問題視され続けている
- 大臣から「訂正を確認していない」と国会で明言される
- 消費者庁にとって“問題県”として扱われる
この状態で県が自主的に説明会を開催したと発表すれば、
「自分たちの違法対応を棚上げして何を説明するのか」
「県民を納得させたいならまず説明責任を果たせ」
という批判を受けるのは目に見えています。
そこで兵庫県庁はこう判断したのでしょう。
「これは国からの依頼であって、県が積極的にやっているわけではない」
と書いておく必要がある。
これが「参事官からの依頼に基づき」という異例の文言につながったと考えられます。
大臣の発言は“兵庫県の行政への圧力”として働き続ける
予算委員会での大臣答弁は、行政内部では非常に重く受け止められます。
- 国の監督官庁が「訂正を確認していない」と明言
- 兵庫県の信頼度が最低レベルに落ちている
- 国が必要なら直接介入する可能性
- 県の自主運用は“危険”と見なされる
こうした認識が、今回の説明会のような動きにも反映されていると考えられます。
③ 行政的には通常あり得ない “役職レベルの明記”
自治体の告知文で、
- 「消費者庁」
- 「国」
と書くことはあっても、「参事官(公益通報・協働担当)」のように役職名まで書くことは異例中の異例 です。
これは行政文書として次の意味を持ちます。
◎(1)県の判断ではない
→ 国が依頼したから開催。
◎(2)県は独自に動いているわけではない
→ 消費者庁の監督のもとでやっている。
◎(3)県内向け・庁内向けの“予防線”
→ 「国からの依頼だから仕方ない」と内部で説明しやすい。
こうした事情は、他県には存在しません。
④ 結果として「当てつけ」のような表現に見える
兵庫県としては、
- 県が自主的に動いていると思われたくない
- 国の関与を正確に示したい
- 内部の“政治的圧力”に対応したい
という行政的な必要性から、「参事官からの依頼」を明記したのでしょう。
しかし、県政の背景を知る県民からすると、
「これは完全に“斎藤知事への当てつけ”では?」
「知事の公益通報問題を意識しているのが丸わかり」
と見えてしまう構図です。
兵庫県が“違法状態のまま”公益通報の説明会を開く矛盾
今回、兵庫県が「公益通報者保護法の改正内容説明会」を開催すると発表しましたが、率直にいえば “どの面下げて開催するのか” というのが多くの県民の感想ではないでしょうか。
なぜなら兵庫県自身が、まさにこの法律の核心部分である
- 公益通報者の不利益取扱い禁止
- 通報者の秘密保持
- 通報者に対する探索行為の禁止
に抵触したとして、第三者委員会により“違法状態”と認定された当事者だからです。
そんな県が「公益通報制度を守りましょう」「法改正のポイントを説明します」と言われても、
多くの県民は次のように感じて当然です。
○ まず自分たちが守れ
○ 県民局長への通報者探索を謝罪と処分の撤回すべきでは?
○ 知事自身が「嘘八百」「公務員失格」と発言した件はどう説明するのか
○ 改正内容より先に、自分たちの違法行為の総括だろう
○ 信用ゼロの状態で、何を語るのか?
とくに今回、告知文に**「消費者庁参事官からの依頼に基づき」とわざわざ書いたのも、兵庫県が自主的にやっているわけではないことを強調した“逃げの表現”**です。
自分たちが違法状態であると指摘された分野に関する説明会を、「国に言われたから開催します」というスタンスでやる。
この姿勢こそ、県民から見れば極めて不誠実であり、まさに矛盾の象徴といえます。
本来であれば、兵庫県は説明会を開く前にやるべきことがある
公益通報者保護法の説明をする立場にあるなら、兵庫県としてまず行うべきは、
◎ 自らの違法行為に対する総括
◎ 通報者への公式謝罪と処分の撤回
◎ 再発防止策の具体的な公表
◎ 知事による誤った発言(嘘八百・公務員失格)の撤回と謝罪
◎ 組織としての内部統制の立て直し
これらです。
本来の順番が逆転しているため、説明会を開催すればするほど、かえって県の信用失墜を深めてしまう構図です。
県民から見えるのは「自浄能力の欠如」と「責任回避」だけ
兵庫県は、
- 不祥事の総括はしない
- 説明責任を果たさない
- 通報者の人権を守らなかった過去を認めない
- 知事は「適切、適正、適法」を繰り返す
- 都合の悪い質問には沈黙
という対応を続けています。
その一方で、国に言われた説明会だけは形式的に開催する。
この姿勢はまさに、行政組織の 「自浄能力の欠如」 を象徴しています。
県が率先して法を尊重する姿勢を示さなければ、どれだけ説明会を開いても説得力はありません。
まとめ:兵庫県の説明会は「説明責任を果たす前の説明会」という倒錯
全国の告知文を比較すると、
- 兵庫県だけが「参事官からの依頼」と明記
- これは全国的にも極めて異例の書き方
- 背景には兵庫県独自の公益通報者問題が存在
- 国(消費者庁)が兵庫県に“特別の関心”を持つ状況
- 県としては「自主開催ではない」ことを強調したかった
以上の点から、この文言は単なる事務的表現ではなく、兵庫県特有の“政治的文脈”が反映された表現だといえます。
今後も、兵庫県の公益通報者保護制度に対する国の関与が続く可能性が高く、今回の言い回しはその象徴的事例といえるでしょう。
◆“公益通報者保護法の説明会を開く前に、
兵庫県自身が公益通報者を適切に保護できなかった問題を説明すべき”
この順番を誤り続ける限り、県がどれだけ制度を語っても県民には届きません。
むしろ、
「どの面下げて開催するんだ」
という県民感情はますます強まるだけでしょう。






