斎藤知事の画像が特定ECサイトに掲載された件について―「不公平」ではなく「行政の中立性」の問題として考える
兵庫県内の特定のECサイト(楽天市場の商品ページ)において、兵庫県知事が特定の商品を手にした写真が掲載されていることが確認された。
この件について、「地場産業の応援ではないか」「些細なことではないか」という声もある一方で、違和感を覚える県民が少なくないのも事実である。
本稿では、違法かどうかを断定するのではなく、**なぜこの事例が“問題視され得るのか”**を、行政の中立性・公平性という観点から整理する。
目次
問題の本質は「不公平」ではない
一部では、
「それなら兵庫県内の全ECサイトにも同じように掲載すべきではないか」
という声もある。
しかし、この問題の本質は「不公平かどうか」ではない。
問われるべきなのは、
- なぜ特定の事業者の商品ページに
- 公的立場にある人物が
- 商品を手にした形で登場しているのか
という点である。
つまりこれは「誰かが得をしているか」ではなく、「行政の立場が民間の商品販売に使われているか」という問題である。
楽天の商品ページは「完全な商用空間」
今回、知事の画像が掲載されているのは、
- 価格が明示され
- 購入ボタンがあり
- セール表記もある
典型的なECサイトの商品販売ページである。
これは、県の公式HPや報道資料、観光PRページとは明確に性質が異なる。
消費者から見れば、
「この商品は、県知事が関与・推薦しているのではないか」
と受け取るのが自然な構図になっている。
意図の有無にかかわらず、結果として「広告的効果」を持つ画像になっている点は否定できない。
公私混同が疑われる理由
公的立場にある人物、とりわけ知事という立場は、
- 行政のトップであり
- 県の権限・予算・政策決定に影響力を持つ存在
である。
その人物が特定の商品を手にした写真が民間ECサイトの商品ページに使われると、
- 行政が特定事業者を支援しているのではないか
- 県としてのお墨付きがあるのではないか
- 他の事業者との差はどう説明されるのか
といった疑問が生じる。
これは個人の好感度の問題ではなく、行政の中立性・公平性に対する信頼の問題である。
「善意」「地場産業応援」では済まない理由
仮に、
- 知事の訪問が善意であったとしても
- 地場産業を応援する意図だったとしても
商用ページに掲載された時点で、文脈は変わる。
行政においては、
「意図していなかった」
「想定外だった」
という説明は、結果責任を免ずる理由にはなりにくい。
むしろ問われるのは、
- 商用利用される可能性を想定していたか
- 画像使用に関するルールや基準があったか
- 特定事業者だけが結果的に利益を得る構造になっていないか
という、ガバナンスの問題である。
「知事の個人SNS画像なら問題ない」は成立するのか
今回の件について、「知事の個人アカウントに投稿されたSNS画像を流用しただけではないか」という見方もある。
しかし、それでも問題は解消されない。
「個人アカウント」かどうかは本質ではない
確かに、近年は首長や政治家が「個人アカウント」と称するSNSを運用することが一般的になっている。
しかし、ここで重要なのは次の点である。
- 投稿者が誰か
- アカウントが「個人」か「公式」か
ではない。
問題になるのは、
その画像が、
公的立場にある人物の影響力を利用して
民間商品の販売促進に使われているかどうか
である。
知事という立場は、アカウントの種別によって切り替えられるものではない。
個人SNS画像でも「商用利用」は別問題
仮に、
- 知事本人が個人SNSに投稿した画像であっても
- 撮影に同意していたとしても
それは 「SNS上での閲覧・共有」を想定した同意に過ぎない。
楽天やAmazonの商品ページは、
- 明確な販売目的
- 価格表示
- 購入ボタン
- セール訴求
を伴う、完全な商業広告の場である。
そこに画像を転用した時点で、
「私的SNS投稿」
→ 「第三者による商用利用」
へと性質が変わる。
SNS投稿=商用利用OKという解釈は、一般には成立しない。
Amazonでも使われている場合、問題はより明確になる
今回、同様の画像が楽天だけでなくAmazonの商品ページでも使われているのであれば、
これはもはや、
- 一時的な誤用
- 想定外の流用
という説明は成り立ちにくい。
複数のECモールで使われているということは、
- 商品の販売促進素材として
- 意図的・継続的に
- 公的立場の人物の画像が使われている
と評価される可能性が高い。
結果として、
知事の影響力が
特定企業の商品販売に組み込まれている構図
が成立してしまう。
行政倫理の観点では、さらに厳しい
仮に法的グレーであったとしても、行政倫理・ガバナンスの観点では話は別である。
- なぜ特定の事業者の商品だけに使われているのか
- 同様の扱いは他事業者にもあるのか
- 県として、首長の画像使用に関する基準はあるのか
これらが説明できない場合、
「個人アカウントだから問題ない」
という主張は、県民の納得を得るものにはならない。
本質は「線引きができていない」こと
この件が示しているのは、
- 個人と公人
- 広報と広告
- 応援と肩入れ
これらの線引きが極めて曖昧になっているという現実である。
そしてその曖昧さが、
- 楽天
- Amazon
といった商業空間で可視化されたことで、県民の違和感として噴き出している。
本来、説明されるべきこと
の件について県や知事側が説明するのであれば、少なくとも以下の点は明らかにされる必要がある。
- なぜこの事業者のページに掲載されているのか
- 他の事業者にも同様の機会は提供されているのか
- 商品を手にした写真の使用について、県としての基準はあるのか
- 商用利用を想定した許可だったのか、否か
これらを説明せずに「問題ない」「騒ぎすぎだ」と片付けてしまえば、かえって県政への不信を深めるだけである。
おわりに
今回の件は、違法かどうかを断定する話ではない。
しかし、
- 行政の中立性
- 公私の線引き
- 説明責任
という観点から見れば、県民が疑問を持つのは極めて自然である。
兵庫県政が信頼を回復するために必要なのは、「問題ない」と言い切ることではなく、なぜそう見えるのかを理解し、説明する姿勢ではないだろうか。





