X(旧Twitter)における斎藤元彦知事関連投稿の構造分析

目次

「Xの空気」と「現実の認識」がズレる理由

兵庫県の斎藤元彦知事を巡る問題について、X(旧Twitter)上では

  • 批判が多いようにも見える
  • しかし擁護の声が目立つようにも感じる

という直感的な違和感を持つ人が少なくありません。

本記事では、2024年3月〜2025年12月14日までのX投稿を対象に行った分析結果と、その可視化グラフをもとに、

なぜ「批判が多いのに、擁護が強く見えるのか」

という疑問を、感情論ではなく構造的に解説します。

分析概要

対象期間:2024年3月1日〜2025年12月14日

検索条件:「斎藤元彦」「斎藤知事」を含むX投稿

取得方法:Xキーワード検索(Latestモード、期間ごとにlimit=50)

分析期間:7区分(約3か月ごと)

分析対象:約280投稿(重複・無関係投稿を除外)

投稿の分類基準

  • A:批判
    違法性・パワハラ・説明責任・辞職要求など、明確な否定的評価
  • B:擁護
    冤罪主張・メディア偏向論・実績評価・応援表明など
  • C:中立
    事実共有、資料紹介、感情を伴わない情報提供

※分類はすべて手動で行い、曖昧な投稿は再確認しています。

グラフ① 投稿数の増減傾向|Xは「事件駆動型」

最初のグラフは、期間ごとの投稿数の推移を示しています。

読み取れる特徴

  • 2024年3〜5月(内部告発)で投稿数が最大化
  • 2024年9〜11月(不信任・再選)で再ピーク
  • 2025年3〜5月(百条委・第三者委報告書)で中規模再燃
  • それ以外の期間は30前後で低位安定

解説

この推移が示しているのは、

斎藤知事が「常に語られる政治家」ではなく、 問題が起きた時だけ一気に注目される存在

だという点です。

支持が厚いから静かになるのではなく、 関心が持続しない構造があることが分かります。

グラフ② 分類割合の変化|批判は多数、擁護は定着

次のグラフは、各期間における

  • 批判(A)
  • 擁護(B)
  • 中立(C)

の割合を示しています。

主な傾向

  • 全期間を通じて批判が最多
  • 再選期(2024年11月前後)に擁護が急増
  • 2025年以降、中立投稿が増加

重要なポイント

ここで注意すべきなのは、

擁護は「増え続けた」のではなく、 再選を境に“残って固まった”

という点です。

批判は事件ごとに噴き上がっては沈静化し、 擁護は一部が強く定着する。

この非対称性が、後述する拡散構造に大きく影響します。

グラフ③ 投稿数とエンゲージメントの乖離|最重要ポイント

3つ目のグラフは、

  • 横軸:投稿数
  • 縦軸:エンゲージメント合計(いいね+RT+リプ)

を示した散布図です。

観察できる構造

  • 批判投稿:数は多いが、1投稿あたりの拡散は中程度
  • 擁護投稿:数は少ないが、1投稿あたりの拡散が非常に大きい
  • 中立投稿:数・拡散ともに控えめ

何が起きているのか

これは

Xでは「多数派」よりも 「結束した少数派」が可視化されやすい

という構造を示しています。

擁護投稿は

  • 内部での相互RT
  • 感情的反応
  • 陣営意識

によってエンゲージメントが集中します。

一方、批判は

  • 事実指摘中心
  • 単発投稿
  • 深掘りされにくい

ため、拡散効率が低くなります。

なぜ「擁護が強く見える」のか

3つのグラフを統合すると、次の構造が浮かび上がります。

  1. 投稿数では批判が常に多数
  2. しかし拡散力では擁護が優位
  3. 結果として、タイムライン上では擁護が目立つ

これは

民意の反映ではなく、 SNSアルゴリズムと行動様式の結果

です。

擁護投稿の高エンゲージは「二層構造」

擁護投稿の拡散力は単一要因ではありません。

層① 擁護コミュニティ内部の相互強化

  • 相互いいね
  • 相互RT
  • 仲間内リプ

→ これはエコーチェンバー型エンゲージ

層② 反斎藤側による「是正リアクション」

  • 誤情報の訂正
  • 根拠提示の要求
  • ファクトチェック的リプ

→ これは健全だが、アルゴリズム的には加点される

Xのアルゴリズム上は、意図に関係なく「エンゲージ」として同等に扱われます。

つまり、こういう逆説が起きている

誤情報に真面目に対応するほど、
その誤情報投稿が“伸びる”

これは直感に反しますが、SNS構造としては現実です。

グラフで見えた「擁護は少数でも拡散力が大きい」という現象の一部は、この善意による増幅が原因です。

実務的な整理:反応すべき投稿/しない投稿

反応すべきもの

  • 数字・法律・制度を誤って断定している
  • 公的機関・報告書を捏造・歪曲している
  • 既に高エンゲージで拡散している

放置してよいもの

  • 感情的な応援
  • 根拠ゼロの感想
  • 少数アカウントの独り言

分析の限界と注意点

本分析は、以下の限界を持ちます。

  • X検索のlimit制限によるサンプル制約
  • Top投稿(高エンゲージ投稿)を網羅していない
  • 手動分類による主観性

したがって、本記事の数値は厳密な統計ではありません

しかし、

構造的な傾向を把握する

という目的においては、十分に示唆的です。

Xの「声の大きさ」をどう受け止めるか

本分析から言えることは明確です。

  • 批判投稿は常に多数
  • 擁護が多く見えるのは「拡散構造」の問題
  • Xの印象=世論ではない

だからこそ重要なのは、

感情的な応酬ではなく、 事実を淡々と積み重ねること

です。

Xは短距離走、 理解と評価は中長距離。

その前提を共有することが、 分断を深めないための第一歩だと考えます。

抗議・デモ・直接行動は「当然の権利」

まず大前提として、

斎藤知事に直接抗議すること
デモや街頭で意思表示をすること

これは
民主主義社会における正当な市民の権利であり、「やるべきか・やらないべきか」という話ではありません。

  • 表現の自由
  • 請願権
  • 政治参加

のど真ん中にあります。

ここを否定する必要は一切ありませんし、むしろ可視化されること自体に意味があります。

X上で「戦うべき相手」は確かに存在する

強い影響力を持ち、
意図的に誤情報や論点ずらしを行う
悪質な擁護アカウント

は存在します。

こうしたアカウントに対して、

  • 事実誤認を放置しない
  • 虚偽を訂正する
  • ロジックの破綻を示す

こと自体は、公共空間の衛生管理として必要です。

ただし「戦い方」は二重構造で考える必要がある

ここが非常に重要です。

Xには

  • 当事者(擁護/批判)
  • 観戦者(中間層・無言層)

が同時に存在します。

したがって、相手に向けた発言であっても、本当の受け手は“静観している第三者”だと考える必要があります。

なぜ斎藤支持者を攻めても意味が薄いのか

  • 斎藤擁護層は
    • すでに強い感情的・同一化的支持に入っている
    • 批判を「自分への攻撃」と受け取る
  • そのため
    • どれだけ論理的に攻めても
    • 反斎藤に転ずる可能性は極めて低い

これは「説得」の問題ではなく、心理的防衛の問題です。

攻めれば攻めるほど、結束と投票動機を強めてしまうリスクすらあります。

Xで「批判」を中間層に届け、拡散力を高めるための実践指針

目的は「勝つ」ことではなく「伝わる」こと

X(旧Twitter)において

  • 批判投稿は数では多数派になりやすい
  • しかし拡散力では擁護投稿が優位に見える

という構造的な乖離を確認しました。

批判の内容を、対立を激化させずに 中間層(判断保留層・静観層)へ届けるにはどうすればよいか

を、実践的な観点から整理します。

Xにおける「中間層」とは誰か(中間層が斎藤知事に疑問を持つことが最重要)

ここで言う中間層とは、

  • 強い擁護もしていない
  • 強い批判も表明していない
  • 情報は見ているが、発信は控えている

という層です。

この層は、

  • 炎上を嫌う
  • 断定的な言説を避ける
  • 「正しさ」より「納得感」を重視する

という特徴を持ちます。

したがって、 擁護派と同じ土俵(感情・断定・対立)で語ると、必ず離脱します。

選挙で本当に重要なのは「離反」ではなく「評価の低下」

中間層に対して必要なのは、

「斎藤知事が嫌いになる」ことではなく
「斎藤知事では不安だ」「任せられない」
と思ってもらうこと

です。

これは非常に重要な違いです。

  • ❌ 怒らせる
  • ❌ 断罪させる
  • ❌ 正義に目覚めさせる

必要はありません。

  • ⭕ 不安を残す
  • ⭕ 判断を留保させる
  • ⭕ 「他の選択肢を考えた方がよい」と思わせる

これで十分です。

中間層は「反斎藤」にはならなくてよい

ここが一番誤解されやすい点です。

中間層に求めるのは、

  • デモに出ることでも
  • SNSで批判を拡散することでも
  • 反斎藤を名乗ることでもない

「今回は斎藤知事以外に投票する」
あるいは
「積極的には支持しない」

という、静かな選択です。

選挙ではこれが最も効きます。

原則①「批判」ではなく「問い」として提示する

なぜ問いが有効か

中間層は、

誰かを断罪する言葉

には距離を取りますが、

一緒に考えるための問い

には反応しやすい傾向があります。

実践例

  • ×「説明責任を果たしていない」
  • ○「この点について、具体的な説明はあったでしょうか」

問いの形を取ることで、

  • 攻撃性が下がる
  • 読み手が思考主体になる
  • RT・引用RTの心理的ハードルが下がる

という効果が生まれます。

原則② 1投稿=1論点(事実1点)を徹底する

拡散されない批判の典型

  • 論点が多い
  • 背景説明が長い
  • 感情評価が混じる

これらは理解コストが高く、中間層には不向きです。

実践指針

  • 1投稿につき、
    • 1つの事実
    • 1つの資料
    • 1つの問い

に限定します。

第三者委員会は 「公益通報者保護法違反」を明確に認定しています。

この点について、 知事本人からの具体的な反論は 公開されているでしょうか。

原則③ 支持者を否定しない(最重要)

どれだけ事実を提示しても、理解できない斎藤擁護の人に腹が立つのは間違いありませんが・・・。

中間層が最も嫌うのは、

人を見下す言説

です。

擁護派を

  • 無知
  • 洗脳されている
  • 信者

と位置づけた瞬間、 中間層は批判そのものから離脱します。

推奨スタンス

  • 動機は理解する
  • 感情は尊重する
  • ただし事実は切り分ける

知事を評価したいと考える人がいること自体は、 不自然なことではないと思います。

ただ、法的な論点については、 感情とは分けて確認する必要があると感じています。

原則④ 感情語を減らし「違和感」を言語化する

感情語がもたらす弊害

  • 怒り → 対立
  • 断定 → 陣営化
  • 強い言葉 → 炎上

これらは短期的な拡散を生むことはあっても、 中間層には逆効果です。

代替表現

  • 「おかしい」→「理解が追いついていない」
  • 「逃げている」→「説明が十分に見えない」
  • 「問題だ」→「情報整理が必要に感じる」

中間層は、 強い正義より、丁寧な違和感に共感します。

原則⑤ Xで完結させない(理解はXの外で取る)

Xは

  • 流れる
  • 切り取られる
  • 誤解されやすい

という特性を持ちます。

有効な設計

  • X:論点提示(入口)
  • blog:全体整理(本体)

ここでは1点だけ触れました。 全体の整理は、blogにまとめています。

これにより、

  • X上の対立から距離を取れる
  • 中間層が安心して深掘りできる
  • 議論の質が保たれる

という効果があります。

原則⑥ 拡散を「量」ではなく「信頼」で捉える

最後に重要な視点です。

中間層に届く拡散は、 爆発的ではなく、静かに積み重なる

という点です。

  • すぐには数字に出ない
  • しかし、後から効いてくる
  • 世論が動く時に参照される

このタイプの拡散は、

  • 政治的議論
  • 行政問題
  • 社会的争点

において、最も持続力があります。

中間層は「説得」ではなく「共有」で動く

Xにおいて、

  • 擁護と正面衝突しても中間層は動かない
  • 感情的な正論も中間層には届かない

一方で、

  • 事実
  • 問い
  • 丁寧な違和感

を積み重ねることで、

「判断材料」として静かに共有される

状態を作ることは可能です。

それこそが、 批判が中間層に届く、最も現実的で持続的な方法だと考えます。