X(旧Twitter)における斎藤元彦知事関連投稿の構造分析
目次
- 1 「Xの空気」と「現実の認識」がズレる理由
- 2 分析概要
- 3 投稿の分類基準
- 4 グラフ① 投稿数の増減傾向|Xは「事件駆動型」
- 5 グラフ② 分類割合の変化|批判は多数、擁護は定着
- 6 グラフ③ 投稿数とエンゲージメントの乖離|最重要ポイント
- 7 なぜ「擁護が強く見える」のか
- 8 擁護投稿の高エンゲージは「二層構造」
- 9 つまり、こういう逆説が起きている
- 10 実務的な整理:反応すべき投稿/しない投稿
- 11 分析の限界と注意点
- 12 Xの「声の大きさ」をどう受け止めるか
- 13 抗議・デモ・直接行動は「当然の権利」
- 14 X上で「戦うべき相手」は確かに存在する
- 15 ただし「戦い方」は二重構造で考える必要がある
- 16 なぜ斎藤支持者を攻めても意味が薄いのか
- 17 Xで「批判」を中間層に届け、拡散力を高めるための実践指針
- 18 Xにおける「中間層」とは誰か(中間層が斎藤知事に疑問を持つことが最重要)
- 19 選挙で本当に重要なのは「離反」ではなく「評価の低下」
- 20 中間層は「反斎藤」にはならなくてよい
- 21 原則①「批判」ではなく「問い」として提示する
- 22 原則② 1投稿=1論点(事実1点)を徹底する
- 23 原則③ 支持者を否定しない(最重要)
- 24 原則④ 感情語を減らし「違和感」を言語化する
- 25 原則⑤ Xで完結させない(理解はXの外で取る)
- 26 原則⑥ 拡散を「量」ではなく「信頼」で捉える
- 27 中間層は「説得」ではなく「共有」で動く
「Xの空気」と「現実の認識」がズレる理由
兵庫県の斎藤元彦知事を巡る問題について、X(旧Twitter)上では
- 批判が多いようにも見える
- しかし擁護の声が目立つようにも感じる
という直感的な違和感を持つ人が少なくありません。
本記事では、2024年3月〜2025年12月14日までのX投稿を対象に行った分析結果と、その可視化グラフをもとに、
なぜ「批判が多いのに、擁護が強く見えるのか」
という疑問を、感情論ではなく構造的に解説します。
分析概要
対象期間:2024年3月1日〜2025年12月14日
検索条件:「斎藤元彦」「斎藤知事」を含むX投稿
取得方法:Xキーワード検索(Latestモード、期間ごとにlimit=50)
分析期間:7区分(約3か月ごと)
分析対象:約280投稿(重複・無関係投稿を除外)
投稿の分類基準
- A:批判
違法性・パワハラ・説明責任・辞職要求など、明確な否定的評価 - B:擁護
冤罪主張・メディア偏向論・実績評価・応援表明など - C:中立
事実共有、資料紹介、感情を伴わない情報提供
※分類はすべて手動で行い、曖昧な投稿は再確認しています。
グラフ① 投稿数の増減傾向|Xは「事件駆動型」

最初のグラフは、期間ごとの投稿数の推移を示しています。
読み取れる特徴
- 2024年3〜5月(内部告発)で投稿数が最大化
- 2024年9〜11月(不信任・再選)で再ピーク
- 2025年3〜5月(百条委・第三者委報告書)で中規模再燃
- それ以外の期間は30前後で低位安定
解説
この推移が示しているのは、
斎藤知事が「常に語られる政治家」ではなく、 問題が起きた時だけ一気に注目される存在
だという点です。
支持が厚いから静かになるのではなく、 関心が持続しない構造があることが分かります。
グラフ② 分類割合の変化|批判は多数、擁護は定着

次のグラフは、各期間における
- 批判(A)
- 擁護(B)
- 中立(C)
の割合を示しています。
主な傾向
- 全期間を通じて批判が最多
- 再選期(2024年11月前後)に擁護が急増
- 2025年以降、中立投稿が増加
重要なポイント
ここで注意すべきなのは、
擁護は「増え続けた」のではなく、 再選を境に“残って固まった”
という点です。
批判は事件ごとに噴き上がっては沈静化し、 擁護は一部が強く定着する。
この非対称性が、後述する拡散構造に大きく影響します。
グラフ③ 投稿数とエンゲージメントの乖離|最重要ポイント

3つ目のグラフは、
- 横軸:投稿数
- 縦軸:エンゲージメント合計(いいね+RT+リプ)
を示した散布図です。
観察できる構造
- 批判投稿:数は多いが、1投稿あたりの拡散は中程度
- 擁護投稿:数は少ないが、1投稿あたりの拡散が非常に大きい
- 中立投稿:数・拡散ともに控えめ
何が起きているのか
これは
Xでは「多数派」よりも 「結束した少数派」が可視化されやすい
という構造を示しています。
擁護投稿は
- 内部での相互RT
- 感情的反応
- 陣営意識
によってエンゲージメントが集中します。
一方、批判は
- 事実指摘中心
- 単発投稿
- 深掘りされにくい
ため、拡散効率が低くなります。
なぜ「擁護が強く見える」のか
3つのグラフを統合すると、次の構造が浮かび上がります。
- 投稿数では批判が常に多数
- しかし拡散力では擁護が優位
- 結果として、タイムライン上では擁護が目立つ
これは
民意の反映ではなく、 SNSアルゴリズムと行動様式の結果
です。
擁護投稿の高エンゲージは「二層構造」
擁護投稿の拡散力は単一要因ではありません。
層① 擁護コミュニティ内部の相互強化
- 相互いいね
- 相互RT
- 仲間内リプ
→ これはエコーチェンバー型エンゲージ
層② 反斎藤側による「是正リアクション」
- 誤情報の訂正
- 根拠提示の要求
- ファクトチェック的リプ
→ これは健全だが、アルゴリズム的には加点される
Xのアルゴリズム上は、意図に関係なく「エンゲージ」として同等に扱われます。
つまり、こういう逆説が起きている
誤情報に真面目に対応するほど、
その誤情報投稿が“伸びる”
これは直感に反しますが、SNS構造としては現実です。
グラフで見えた「擁護は少数でも拡散力が大きい」という現象の一部は、この善意による増幅が原因です。
実務的な整理:反応すべき投稿/しない投稿
反応すべきもの
- 数字・法律・制度を誤って断定している
- 公的機関・報告書を捏造・歪曲している
- 既に高エンゲージで拡散している
放置してよいもの
- 感情的な応援
- 根拠ゼロの感想
- 少数アカウントの独り言
分析の限界と注意点
本分析は、以下の限界を持ちます。
- X検索のlimit制限によるサンプル制約
- Top投稿(高エンゲージ投稿)を網羅していない
- 手動分類による主観性
したがって、本記事の数値は厳密な統計ではありません。
しかし、
構造的な傾向を把握する
という目的においては、十分に示唆的です。
Xの「声の大きさ」をどう受け止めるか
本分析から言えることは明確です。
- 批判投稿は常に多数
- 擁護が多く見えるのは「拡散構造」の問題
- Xの印象=世論ではない
だからこそ重要なのは、
感情的な応酬ではなく、 事実を淡々と積み重ねること
です。
Xは短距離走、 理解と評価は中長距離。
その前提を共有することが、 分断を深めないための第一歩だと考えます。
抗議・デモ・直接行動は「当然の権利」
まず大前提として、
斎藤知事に直接抗議すること
デモや街頭で意思表示をすること
これは
民主主義社会における正当な市民の権利であり、「やるべきか・やらないべきか」という話ではありません。
- 表現の自由
- 請願権
- 政治参加
のど真ん中にあります。
ここを否定する必要は一切ありませんし、むしろ可視化されること自体に意味があります。
X上で「戦うべき相手」は確かに存在する
強い影響力を持ち、
意図的に誤情報や論点ずらしを行う
悪質な擁護アカウント
は存在します。
こうしたアカウントに対して、
- 事実誤認を放置しない
- 虚偽を訂正する
- ロジックの破綻を示す
こと自体は、公共空間の衛生管理として必要です。
ただし「戦い方」は二重構造で考える必要がある
ここが非常に重要です。
Xには
- 当事者(擁護/批判)
- 観戦者(中間層・無言層)
が同時に存在します。
したがって、相手に向けた発言であっても、本当の受け手は“静観している第三者”だと考える必要があります。
なぜ斎藤支持者を攻めても意味が薄いのか
- 斎藤擁護層は
- すでに強い感情的・同一化的支持に入っている
- 批判を「自分への攻撃」と受け取る
- そのため
- どれだけ論理的に攻めても
- 反斎藤に転ずる可能性は極めて低い
これは「説得」の問題ではなく、心理的防衛の問題です。
攻めれば攻めるほど、結束と投票動機を強めてしまうリスクすらあります。
Xで「批判」を中間層に届け、拡散力を高めるための実践指針
目的は「勝つ」ことではなく「伝わる」こと
X(旧Twitter)において
- 批判投稿は数では多数派になりやすい
- しかし拡散力では擁護投稿が優位に見える
という構造的な乖離を確認しました。
批判の内容を、対立を激化させずに 中間層(判断保留層・静観層)へ届けるにはどうすればよいか
を、実践的な観点から整理します。
Xにおける「中間層」とは誰か(中間層が斎藤知事に疑問を持つことが最重要)
ここで言う中間層とは、
- 強い擁護もしていない
- 強い批判も表明していない
- 情報は見ているが、発信は控えている
という層です。
この層は、
- 炎上を嫌う
- 断定的な言説を避ける
- 「正しさ」より「納得感」を重視する
という特徴を持ちます。
したがって、 擁護派と同じ土俵(感情・断定・対立)で語ると、必ず離脱します。
選挙で本当に重要なのは「離反」ではなく「評価の低下」
中間層に対して必要なのは、
「斎藤知事が嫌いになる」ことではなく
「斎藤知事では不安だ」「任せられない」
と思ってもらうこと
です。
これは非常に重要な違いです。
- ❌ 怒らせる
- ❌ 断罪させる
- ❌ 正義に目覚めさせる
必要はありません。
- ⭕ 不安を残す
- ⭕ 判断を留保させる
- ⭕ 「他の選択肢を考えた方がよい」と思わせる
これで十分です。
中間層は「反斎藤」にはならなくてよい
ここが一番誤解されやすい点です。
中間層に求めるのは、
- デモに出ることでも
- SNSで批判を拡散することでも
- 反斎藤を名乗ることでもない
「今回は斎藤知事以外に投票する」
あるいは
「積極的には支持しない」
という、静かな選択です。
選挙ではこれが最も効きます。
原則①「批判」ではなく「問い」として提示する
なぜ問いが有効か
中間層は、
誰かを断罪する言葉
には距離を取りますが、
一緒に考えるための問い
には反応しやすい傾向があります。
実践例
- ×「説明責任を果たしていない」
- ○「この点について、具体的な説明はあったでしょうか」
問いの形を取ることで、
- 攻撃性が下がる
- 読み手が思考主体になる
- RT・引用RTの心理的ハードルが下がる
という効果が生まれます。
原則② 1投稿=1論点(事実1点)を徹底する
拡散されない批判の典型
- 論点が多い
- 背景説明が長い
- 感情評価が混じる
これらは理解コストが高く、中間層には不向きです。
実践指針
- 1投稿につき、
- 1つの事実
- 1つの資料
- 1つの問い
に限定します。
例
第三者委員会は 「公益通報者保護法違反」を明確に認定しています。
この点について、 知事本人からの具体的な反論は 公開されているでしょうか。
原則③ 支持者を否定しない(最重要)
どれだけ事実を提示しても、理解できない斎藤擁護の人に腹が立つのは間違いありませんが・・・。
中間層が最も嫌うのは、
人を見下す言説
です。
擁護派を
- 無知
- 洗脳されている
- 信者
と位置づけた瞬間、 中間層は批判そのものから離脱します。
推奨スタンス
- 動機は理解する
- 感情は尊重する
- ただし事実は切り分ける
例
知事を評価したいと考える人がいること自体は、 不自然なことではないと思います。
ただ、法的な論点については、 感情とは分けて確認する必要があると感じています。
原則④ 感情語を減らし「違和感」を言語化する
感情語がもたらす弊害
- 怒り → 対立
- 断定 → 陣営化
- 強い言葉 → 炎上
これらは短期的な拡散を生むことはあっても、 中間層には逆効果です。
代替表現
- 「おかしい」→「理解が追いついていない」
- 「逃げている」→「説明が十分に見えない」
- 「問題だ」→「情報整理が必要に感じる」
中間層は、 強い正義より、丁寧な違和感に共感します。
原則⑤ Xで完結させない(理解はXの外で取る)
Xは
- 流れる
- 切り取られる
- 誤解されやすい
という特性を持ちます。
有効な設計
- X:論点提示(入口)
- blog:全体整理(本体)
例
ここでは1点だけ触れました。 全体の整理は、blogにまとめています。
これにより、
- X上の対立から距離を取れる
- 中間層が安心して深掘りできる
- 議論の質が保たれる
という効果があります。
原則⑥ 拡散を「量」ではなく「信頼」で捉える
最後に重要な視点です。
中間層に届く拡散は、 爆発的ではなく、静かに積み重なる
という点です。
- すぐには数字に出ない
- しかし、後から効いてくる
- 世論が動く時に参照される
このタイプの拡散は、
- 政治的議論
- 行政問題
- 社会的争点
において、最も持続力があります。
中間層は「説得」ではなく「共有」で動く
Xにおいて、
- 擁護と正面衝突しても中間層は動かない
- 感情的な正論も中間層には届かない
一方で、
- 事実
- 問い
- 丁寧な違和感
を積み重ねることで、
「判断材料」として静かに共有される
状態を作ることは可能です。
それこそが、 批判が中間層に届く、最も現実的で持続的な方法だと考えます。





