元県民局長の告発文書は「怪文書」だったのか?
怪文書とは、発行者や真偽が不明な匿名の文書で、主に特定の組織や個人への誹謗中傷、根拠のない主張、または被害妄想などが記載されています。単に内容が支離滅裂で理解しにくい文書を指す場合や、インターネットスラングとして得体の知れない気味悪さを持つ文章を指すこともあります。
県民局長の告発文書は、一定の事実が認められ、不正の目的でなされたものでは無いと評価されています。
目次
「告発文書は怪文書で信用に値しない 私たちは被害者だと言いながら…」元県民局長の私的情報 前総務部長が漏えいか 県議らが証言「前総務部長がファイルを読み上げた」百条委委員長は刑事告発も示唆【兵庫県・斎藤知事めぐる問題】(2025年1月28日)
「“あれは怪文書で、私たちは被害者”などと言いながらファイル出してきた」「内容を読み上げた」県議2人が証言
ひょうご県民連合・迎山志保県議の証言
「雑談の流れから、『本当に大変なことになってきた。あれ(元県民局長の告発文書)は怪文書である。信用に値する文書ではない。私たちは被害者だ』などと言いながら、前総務部長が机の上にファイル2冊を出してきた。ファイルを開いて見せてきたので、ページをめくると、その内容は元県民局長のプライバシーに関するものであった」
自民党・山口晋平県議の証言
「前総務部長から『元県民局長の公用PC内のデータをプリントアウトしたものを見て下さい』と言われ、ファイルを開けて見せられた。私があまりにも見ようとしなかったので、前総務部長が読み上げた。それは元県民局長のプライバシー情報であった」
https://www.mbs.jp/news/feature/kansai/article/2025/01/104923.shtml(出典:MBSNEWS)
「噓八百」会見直後、斎藤知事側近は県警本部に走った(2024年9月28日)
3月27日夕、神戸市中央区の兵庫県庁からほど近い県警本部庁舎に県幹部の姿があった。
この直前、兵庫県知事の斎藤元彦(46)は記者会見で怒りをあらわにしていた。「業務時間中に噓八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」。斎藤は男性をこき下ろし、文書は誹謗(ひぼう)中傷に当たるとして「被害届や告訴なども含めて法的手続きを進めている」と宣言した。
だが、文書はその斎藤自身のパワハラ疑惑などを告発したもの。公益性があり、立件は難しいとの県警側の感触を得ると、以降、斎藤が自ら告訴に言及することはなくなった。
https://www.sankei.com/article/20240928-YC5COTJC4VPQ3D43MJHNBMLRMY(出典:産経新聞)
百条委員会の報告書
知事は、3月27日の記者会見で県民局長の文書を「事実無根」、「嘘八百」と評したが、約9ケ月に及ぶ本委員会の調査により、文書には一定の事実が含まれていたことが認められた。
今回の文書問題を振り返ると、文書に記載の当事者である知事や幹部職員による初動対応や内部公益通報後の第三者機関の検討、元県民局長の処分過程など全体を通して、客観性、公平性を欠いており、法令の趣旨を尊重して社会に規範を示すべき行政機関の行うべき対応としては大きな問題があったと断ぜざるを得ない。
https://partsa.nikkei.com/parts/ds/pdf/20250304/20250304.pdf(出典:百条委員会報告書)
文書問題第三者委員会の報告書
本件文書は、公益目的はあるが、齋藤知事、片山元副知事及びその他の幹部職員に対しての複雑な感情に基づいても作成され、配布されたものと認められる。そこで、本件文書の作成・配布行為については、 「不正の目的」がなかったといえるかどうかが問題になる。
まず、「不正の利益を得る目的」について検討すると、元西播磨県民局長が令和6年3月末での退職を希望し、民間団体への再就職も決まっていたことから、本件文書内容を流布させることで「不正の利益を得る」ということは考えにくい。したがって、「不正の利益を得る目的」があったとは認められない。
次に、「他人に損害を与える目的」については、確かに、本件文書の文面からは、これを作成・配布することで齋藤知事らの信用が低下する効果を望む感情も窺える。しかし、上記の本件文書作成・配布当時の同局長の退職
をめぐる状況に照らすと、将来的に何らかの影響力を行使して、実際に齋藤知事や県の幹部職員らを失脚させる目的があったとまでは認めることができない。また、本件文書末尾に「関係者の名誉を毀損することが目的ではないので、取扱いには配慮するように」と本件文書の取扱いについて注意を促す記載があることに照らすと、本件文書に記載された企業、金融機関や県の外郭団体等に損害を与える目的があったとも認めがたい。
県は、齋藤知事が本件文書を知人から入手したことをきっかけに始まった初期の詞査段階では、保護法を全く意識せずに、 本件文書を「名誉毀損の怪文書」であるとして対応した。また、保護法との関係が意識され始めた4月1日以降は、元西播磨県民局長の公用パソコン内に存在した別のデータ内容も勘案して、「政権転覆をねらう不正の目的あり」との理由で、3号通報には当たらないものとして取り扱った。
確かに、 本件文書中には齊藤知事や片山元副知事らを椰楡するような表現があり、公用パソコン内に存在したデータ中には、「政権転覆Jといった文言もあった。しかし、当時元西播磨県民局長が退職間近であったこと等に照らすと、それは単に空想上のものであって、実行に移す意図までを窺うことはできない。また、本件文書の配付先が10か所に限定され、その中に県警本部が含まれていたことや、上記のとおり、取扱いに注意してほしいとの注記がなされていることからは、直ちにこの文書内容を広く流布して県政を混乱に陥れようとの不当な意図も看取することができない。
現に、 3 月 27日の齋藤知事の記者会見までは、本件文書の存在は世間の注目を集めていなかったし、 それによる県政の混乱もなかった。
以上の考察からは、本件文書の配布が 「不正の目的」 でなされたものと評価することはできない。 本件文書の作成・配布行為は、 3号通報に該当する。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk19/documents/honnpenn2.pdf(出典:文書問題第三者委員会報告書)
日本ファクトチェックセンター
元局長の告発文は、百条委によって一定の事実が確認されたと認定されている。また、元局長は不服申し立てをしなかった理由について「後輩や職員に迷惑をかけたくなかった」と説明している。よって「県民局長が不服申立てできなかったのは、告発文書に事実がほぼ無いただの嫌がらせの怪文書だったから当然なだけ」は誤りと判定した。
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-saito-hyogo-whistleblower-claim(出典:日本ファクトチェックセンター (JFC))